55 ページ5
期末テストが近づいてきている、らしい。
別に今の範囲でわからないところはないし、普通に勉強はしていたから悪い成績にはならないだろう。
切「なー翼！
俺爆豪に教えてもらうことになったんだけど一緒にやらないか？
爆豪も翼なら良いって言うだろうし」
行くわけない。
翼は頭がいいんだから勉強会なんて必要ないんだよ。
それに、爆豪くんも僕がボロを出すの待ってるから一緒にいると気を張らなくちゃいけなくて疲れるし。
大体彼らと勉強するメリットが見当たらない。
悪意のない笑顔を向けられて、表情には出さないが内心は荒ぶっている。
ただでさえ、最近はなぜか轟くんが構ってきて苛立っているのだ。
霊感とまでは言わないにしても、気配を感じる彼にはあまり近づきたくない。
翼に気がつかないようにするのも一苦労だ。
…翼なら、付き合いが良いからこういうのは断らないけど。
『「えっと、ごめん
誘ってくれて嬉しいんだけど今回は1人でやるよ』」
切「お、そうか？わかった！」
勝「おい」
『「どうしたの？』」
爆豪くんに腕を掴まれてしまった。…力が強いな。
顔を上げると彼はニヤリと、嫌な笑顔を浮かべていた。
勝「この馬鹿を俺1人で教えんのは面倒なんだよ
てめぇも来いや」
『「っいや、あのだから』」
勝「付き合いのいい翼なら断らねぇよな
ほら、郁に教えてたから教えんのは得意だろ？」
『「…わかったよ
少しなら、付き合う』」
くそっ…イライラする。嫌味な言い方も挑発だとわかっているのに上手く流せない。
切島くんは嬉しそうに喜んでいるが、僕は酷い顔をしているかもしれない。
体育祭を過ぎてから、あっという間にセミが鳴く季節が来た。
暑さと湿気が身体を重くさせ、あの日を思い出させる。
目が覚めた後、ヒーロー殺しを見た僕は笑った。
守るものも守られるものも今の世は全て間違ってる。
その粛清を望む彼と僕は少し似ていた。
この季節は嫌いだ。
人の温もりを欲させない季節ではあるが、全てが鬱陶しくなる。
街の喧騒や人と人ならざる者の声で酔いそうになるのだ。
長期休みは家政婦は来ないようにしている。
だから、ずっと1人だ。
1人、何度も何度も気が狂うほど思い出しては記憶に刻む。
お盆になれば霊たちも現世に帰ってくる。
挨拶に来る霊たちの相手をしながら、自分は来ない家族を待つのだ。さぞ滑稽だろう。
精神が乱れると個性も発動しやすくなる。
警戒は解けない。
もうすぐ夏休みが来る。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1673人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ハデス - 普通に番外編として小説で世に出せるよねってくらいいい話でした。何度読んでも面白い。完結おめでとうございます (7月17日 12時) (
レス) id: b5ef1167b7 (このIDを非表示/違反報告)
ぬ - 一気読みさせて頂きました…こんなに泣ける小説初めて読んだ…これ無料でいいんですか…！？本当に素敵すぎる作品を生み出してくださってありがとうございます…！！！ (2023年3月30日 8時) (レス) @page19 id: 267167a797 (このIDを非表示/違反報告)
引きこもり隊 - 読んでてこんなに泣いたの初めてだ。もう、本にして売れると思います。素晴らしい作品を作ってくれてありがとうございます。 (2022年8月6日 16時) (レス) id: af8345609d (このIDを非表示/違反報告)
ニャノこ - とても感動しました。これまで色々な話を見てきましたがこれほど自分の中で共感できる話はありません。翼くんと郁くんがまたあえることを願っています。 (2022年7月27日 22時) (レス) @page19 id: 7687561dfd (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 物凄く感動しました。終わり方も物凄く綺麗で納得の行く感じで、占ツク中毒者ですがここまで素晴らしいと思った作品は初めてです。これを無料で読めるこの世界に感謝、っていうレベルです。笑 書いて、共有してくださり本当にありがとうございました！ (2022年5月1日 1時) (レス) @page19 id: b375adba0d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：すえさん
| 作成日時：2019年10月25日 7時
