七瀬家の末っ子くん

我儘が8個 ページ8

side 八乙女 楽



番組が終わり楽屋に戻ると

笑顔だった天の顔が一瞬にして怒りに変わった


天「…華

今日のトークはどういうつもりなの」


『どういうつもりって

ファン公認で仲良しになろうと思って

これでお互いの呼び方も気にならないし

遊びに行ってても何も言われないでしょ』


やっぱり確信犯だったのか華のやつ

俺と龍は半ば呆れながら見守る

天はまだ眉をひそめている


天「きみが仕事をどう捉えているのか知らないけど

陸はアイドルできみは俳優

ボクたちはどんな時でも

ファンやお客さんのためにあるべきで

きみたちがただ仲良くして楽しんでも

それはきみたち自身のためであって

自己中心的な甘ったれだ


私欲で昔の家族に甘えるだけなら

芸能人としての自覚が足りないよ」


相変わらず実の弟にも容赦ねぇな

天が言葉をかけると華は黙って天を見つめた

見つめ合って数秒が立つと華は静かに口を開いた


『…なら僕はどうしたら正解なの』


その目はまだ16歳の少年でありながら

大人びすぎていて、でも純粋で寂しそうで


『…昔の家族だからプライベートでも会っちゃダメ

仕事でも仲良くしちゃダメ

僕はいつでもファンのためにあらなくちゃダメ

理想の…みんなの望む美少年を演じなきゃダメ

自分だけが楽しいことはダメ』


その目はただ困惑を表していて

さっきまでの純粋な瞳は酷く濁っていた

天も初めて見る姿に目を見開く


『僕は僕でいちゃダメ？

役を演じるのは仕事だけじゃダメ？

仲良くしたい人と仲良くしたらダメ？


…戸籍が抜かれたらもう家族って言っちゃダメ！？

にぃをにぃって言っちゃだめ！？』


天「っ華！！

興奮しちゃだめだ！

落ち着いて『僕は誰になればいいの！？』華」


『僕が僕じゃないなら

それもう僕じゃなくていいじゃん！！


っ母さんたちの家に帰りたい！！

…陸にぃとまた家族に戻りたい！！


っ…僕じゃない僕にならなきゃいけないなら

こんな苦しいくらいなら

誰にも求められなくていい！！！


僕は天にぃみたいに大人になれないよ！！

楽しくない話で笑いたくないし！

馬鹿みたいな作り話に泣きたくない！

嫌なことは嫌って言いたいし！

寂しいときは我慢なんてしたくない！


僕はどこまで京杏 華でいなくちゃいけないの？！』


悲痛な声をあげる華に誰も何も言えない


『っはぁっはぁっ…はぁっ』


驚きのまま固まっていると

華は急に苦しそうな呼吸を始めた


天「華！！」

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