七瀬家の末っ子くん

我儘が4個 ページ4

side 九条 天



朝事務所を飛び出してから21時を回った今も

華が帰ってこない


家でずっと待っているのにどこに行ったのか

もし陸に会いに行くとしても

行く手段がないからそう遠くには行けないはずだし

でも電車を使ったかもしれないか

普段は騒ぎになるため使用を禁止しているけど

怒った華は突飛な行動に出ることが多いのだ


病弱で素直でピュアすぎる双子の弟と

我儘放題だけど放っておけない弟


ボクにとってどちらも可愛い弟だ

例え戸籍上で違っていてもそれは変わらない


携帯に連絡しても繋がらないし

龍と楽にも連絡してもらうと辛うじて返信はくるが

大丈夫としかないらしい

…ボクには返さないくせに


まあいい

明日の仕事は午後から

少しなら夜更かしできる

帰ってきたらきちんと話をつけないと



22時を回った頃

ガチャッと玄関の扉が開く音が聞こえた

そして


『ゴホッゴホッ…っはぁ、はぁ…』


苦しそうな呼吸音

ボクは吸入器を持って玄関に向かった

そして壁にもたれている華に慣れた手つきで

吸入器を吸わせる


天「…バカだね

陸に会って急に興奮したら発作が起きることなんて

容易に考えられるのに」


ボクがそう言うと


『…うるさいな

発作が起こってでも…会いたかったんだもん


もう戸籍上兄弟じゃなくても

陸にぃはずっと僕の家族なんだから』


華は寂しそうに言った


天「…陸はもう君の家族じゃない

君の家族は九条さんと僕と理だ『違う！！』…」


『僕の家族は母さんと父さんと陸にぃ…だけだよ


家族なら！

嫌がる弟を無理やり連れてったりしない！！


泣いてる弟を置いて行ったりしない！！


…どんな理由があっても

家族をやめろなんて言わない…


天にぃは…ひどいよ』


華は泣きながら部屋に戻っていった


そうだね

どんな理由があっても

そんなことをしたボクは酷い人間に見えるよね


でも

ボクは華を手放す気はないよ

どんなに陸に懐いていたって

華はボクの弟なんだから

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