七瀬家の末っ子くん

我儘が25個 ページ25

side 七瀬 陸



不安で泣きそうになる華を天にぃは慰めた
その光景は昔と何も変わっていなくて
成長した2人の姿が違和感を感じさせた


『…にぃたちのお名前は？』


華は涙を袖で拭うと俺たちを見た


天「ボクは天、こっちは陸だよ」


天にぃが簡単に紹介してくれたのでよろしく、と挨拶をすると華は目を大きく開けて驚いた


『すごーい！

華のにぃたちとおんなじお名前だ！

それに髪の色も一緒！』


華は嬉しそうに笑った
でもその笑顔はすぐに曇ってしまう


『でも…華の陸にぃはあんまり元気じゃないの

華陸にぃにもっと会いたいし一緒にもっと遊びたいけど

陸にぃはあんまり遊べないって母さんが言ってた

ほっさ、っていうのが起きちゃうんだって』


天「…そうなんだ」


華が悲しそうな顔をして俯くと天にぃは頭を撫でていた手を止めた
華…ごめんね
俺も遊びたかったよ、華とも天にぃとも
でもそれが出来ないことがもどかしかった
1人だけできない自分が嫌だった


『華は天にぃ大好きだけど

陸にぃも大好きだから3人で遊びたいの

でも華の我儘だから言っちゃダメって知ってるよ

だからにぃたちには内緒』


華は口に人差し指を当てて寂しそうに笑った
寂しい思いをさせていたんだ
辛いのは俺だけじゃなかった
みんなみんな昔から俺を思ってくれてた


陸「…寂しいの我慢して華は偉いね」


俺が華の頭を撫でると華は俺の手を掴んで
ぎゅっと握り首を横に振る


『ううん！華は偉くないよ！

にぃたちの方が偉いの！

天にぃは華といつも遊んでくれるし

陸にぃは華の話いつも楽しそうに聞いてくれるの！』


嬉しそうに話す姿は本当に10歳の子どものようで
こんなに喜んでくれていたんだと俺まで嬉しくなる


『華もにぃたちのために何かしたくて

でも何すればいいかわかんなくて…

だからいっぱい考えた！

それで思いついたのは“我儘を言わない”こと！

華がちゃんと我慢すれば

にぃたち困んないかなって』


我慢なんてしなくていいんだよ華
俺も天にぃも華が我儘なんて思ったことないよ
いつも俺たちの元気の源だった


天「…華は寂しくないの？」


天にぃは優しいからきっと華に我慢なんてさせたくないんだろうな


『今はちょっと寂しいけどいいの！

陸にぃが元気になったら

3人で一緒にいっぱいいろんなことするから！

だから今は華我慢できる！』


“3人で一緒に”
それがどんなに嬉しくてどんなに俺が待ち望んだ言葉か華は知らないでしょ
ありがとう華

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