七瀬家の末っ子くん

我儘が19個 ページ19

side ？？？？



？「華、誰にも言わないで来ちゃって大丈夫なの？

みんな心配してるよ？」


俺が声をかけても華は体育座りをして

クッションに顔を埋めたまま


？「俺はずっとここにいてもいいけど

それならきちんと話をしてからじゃないと

警察が動きだしたら俺も華も終わっちゃうよ

未成年誘拐になるのかなこれって」


俺がそういうと…


『…それはやだ

でも…でももうみんなには会いたくない

僕のことを知らないところに行きたい』


俺は華の涙をティッシュで拭う


？「…何で行きたいの？」


『…っ僕がいると、みんな傷つくんだ

天にぃはっ、僕を守ろうと、して…あいつに、怒らちゃう、し

っ陸にぃは、僕が、苦しいのはっ、自分のせい、だ

って…自分を責めて、る


…もう嫌だよ

僕はっ、誰も幸せにできない！

大好きなにぃたちに、ぅっ1番幸せにっ、

なって欲しいのに！！

っ僕のせいで、幸せになれない…』


泣きじゃくる華の頭を撫でる

16歳でたくさんのものを抱えすぎた心が

今までは何とか保ってきたけど

今回ついにキャパオーバーしてしまった


家族を心の支えにしていた華に

拒絶というストレスはそれほど大きなものだった


今華の心は悲しさと寂しさと悔しさを吐き出している

今負荷をかけたら今度こそ立ち直れない

華は苦しそうに息を繰り返す

俺が吸入器を吸わせても

落ち着かないためかまだ苦しそうだ


？「大丈夫だよ、落ち着いて華


だったら俺らが家族になってあげる

ずっと大切にしてあげる

俺らが華のお兄ちゃんになってあげるよ


辛い思いはさせないから

華のことぜーっんぶ話して


俺は華のお兄ちゃんだから全部受け止めてあげる

言ってごらん」


『…本当？僕のにぃになってくれる？

僕のこと置いていかない？』


華は“家族”という言葉に反応すると俺を見た

その顔は寂しくて何かに縋り付きたくて

希望を探していた


？「うん本当

だから華の思ってること俺に教えて」


『…僕は

前の家族が大好き

天にぃも陸にぃも大好き

母さんと父さんに会いたい


鍵の部屋は嫌だ

ずっと監視されるのも嫌だ

友達だって欲しい

仕事以外でも話すような友達がほしいよ


無理矢理笑うのはもう疲れた

“京杏 華” も “九条 華” ももう疲れた


…“七瀬 華” に戻りたい

人気も賞も賞賛も感動もいらない


僕は僕でいたい…』


華の心からの本音だった

泣き疲れて眠った華をベッドに寝かせて

俺はユキに電話をかけた

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