七瀬家の末っ子くん

我儘が16個 ページ16

side 京杏 華



僕は約束通りあいつのいる外国へ行った

ハリウッド映画の撮影をしながら

モデルやテレビ出演など

日本とあまり変わらない生活をしていた


やっと1年が経ち

映画の撮影が終わるとともに僕は帰国した


そこで初めてTRIGGERが八乙女事務所を

抜けたことを知った


聞くところによるとツクモの圧力によるものらしい

ツクモの新しい社長によって

龍が嵌められ

TRIGGERは失脚させられた、らしい


天にぃが心配ではあるが

まずは陸にぃに会いに行こう


僕は陸にぃがいると聞いたテレビ局へ足を運んだ


すれ違うスタッフさんたちに挨拶をしながら

探していると案外すぐに見つかった


『陸にぃ』


陸「…華？」


名前を呼んですぐに駆け寄った

久しぶりに会えたんだ

喜んでくれるかな？

期待に胸を膨らませる


『やっと帰ってこれたんだ

ただいま！陸にぃ！』


この1年連絡は取らせてもらえなかった

だから急だったかもしれないけど

久しぶりに会えてとても嬉しい






だけど陸にぃの顔は嬉しさと困惑を表していて

陸にぃの口から聞こえたのは



陸「…華、ごめんね」


なぜか僕への謝罪の言葉だった

意味がわからなくて何も言えずにいると


陸「俺わかったんだ

なんで2人が九条についていったのか


俺のためだったんだね

俺、何もわかってなかった

ごめんね」


陸にぃは悲しそうに僕に謝り始める

何を言っているのか僕にはわからなかった


『違う！違うよ！

謝らないで陸にぃ！


僕は 陸「ごめん華」…陸にぃ？』


悲しそうな顔を辞めさせたくて

いつもの陸にぃに戻ってほしくて

手を伸ばせば振り払われてしまった


陸「今はちょっと…

顔を見たくないんだ」


陸にぃを見れば

それは明らかな僕への拒絶だとわかった


違う、違うのに

僕が苦しいのは陸にぃのせいじゃないのに

僕は陸にぃにもう一度手を伸ばしたが

その手が届く前に

陸にぃは僕に背中を向けて去ってしまった


『違う…のに


陸にぃだけは僕を…』


僕を拒絶しないで欲しかった


僕の手はいつも誰にも届かない

家族から離されたあの日も

今日も…


ただ家族に戻りたかった

昔みたいな仲のいい5人家族に


でもそれはもう出来なくなった

家族は僕へ罪悪感を持つだけだった


僕がここにいる意味は

結局彼らを悲しませるだけに過ぎなかった



終わりだ

もう何もかも終わりだ


僕はスマホを取り出して

連絡帳からある名前を探して電話をかけた


『…助けて』

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