【名探偵コナン】 瘡蓋を剥がすな

16.元気にしてるかな ページ19

「私ばっかり好きみたいで、
なんか悔しくなっちゃって」

お酒が回った私のまとまりのない長い話を、
男性は嫌な顔一つせず、相槌を打って聞いてくれた。

「馬鹿みたいでしょ。
七年の間に彼を忘れて、新しい人を見つければいいのにって」

「いえ、寧ろ誠実な人だと思いましたよ」

「それなら良いんですけど。
誠実が過ぎて、いつのまにかこんな歳になっちゃいました」

一本飲み終わり、新しい缶ビールを開けたところで、
ふっと気が付いた。

「あれ、貴方、何歳でしたっけ？
しかもお名前も伺ってないですよね」

「沖矢 昴、二十七歳です」

「え、年下なんですか……なんかもう嫌」

纏っている雰囲気があまりにも大人っぽくて、
てっきり、同い年か少し年上だと思っていた。
さらに聞けば、大学院生をしているという。

よく見なくても男前だし、優しいし、余裕があって。
きっと、大学ではさぞモテるんだろうなぁ、沖矢さん。

「私は咲本 Aです。
言いたくないけど、二十九歳です。
今日はお話を聞いてくださってありがとうございました」

空の缶ビールが入ったビニール袋を
カラカラと鳴らして立ち上がる。

「こちらこそあんまん、ありがとうございました。
また会えたらいいですね」

「ええ、また」

沖矢さんに背を向けて歩き出す。
正直言うと、酔った姿も、本音も曝け出した相手に、
もう一度会いたいとは思わない。
沖矢さんが悪い訳ではないのだが。

それにしても。
何故か沖矢さんに重なる面影があった。

「……赤井さん」

顔も、髪も、話し方も、
彼と沖矢さんは何一つ似ていない。
似ているとしたら、
射抜くような鋭い翠の瞳くらいだ。

そういえば、暫く連絡もしていない。

「元気に、してるかな」

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