【YOI】明日、君の未来を盗みに行きます。

2.雪を連れてやってきた ページ4

勇利の進退については、
誰も何も問わなかった。

私も勇利は好きにしたら良いと思うし、
私が言える立場ではない。

そう思っていた矢先、
世界中に拡散されたある動画が、
彼の運命を変えることになる。

"離れずにそばにいて"
ヴィクトル・ニキフォロフの、
今期フリープログラムを勇利が滑り、
その動画は、たちまち反響を得た。

ようやく桜が満開になったと思えば、
その日は、九州では珍しい酷い雪だった。
もしかしたら、この異常気象は、
彼の訪れを知らせるものだったのかもしれない。

「ヴィ、ヴィクトル……ニキフォロフ……？」

私はスケートを詳しくは知らない。
ただ、勇利があまりにも
ヴィクトルが好きなものだから、
ファンレターを英語に変換する手伝いをしたり、
テレビの前から動かない勇利を眺めたり、
勇利の喜ぶ顔を見たくて、ヴィクトルが出場する大会に
自腹を切って、勇利を連れて行ったことさえある。

普通よりは、彼についての知識は
頭に蓄積されていると自負している。

「Hi！ 勝生勇利という日本人がいるのは、
ここで合ってる？」

「そうです、けど……
まだ寝ていると思います。
とりあえず、上がって下さい」

あまりにも慌てすぎて、
ちゃんとした接客が出来ずにどぎまぎしていると、
両親がやってきたので、後は全部丸投げした。

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