【wrwrd!】【MSSP】元一般人と軍人と傭兵 (ページ8)

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背後でおひいさんが私の名前を呼んでいる。
目の前の男はナイフを下ろすどころか、力を緩めない。体格差考えろやこいつ。

「…姫様が呼んでいますので退いてくれますか？」
「嫌や、っ！」

ふ、とかまえていた短刀から力を抜き、いきなり支えがなくなったゾムが前のめりになったところを上手く服を掴んで投げ飛ばした。

「はあ！？」

ゾムの驚く声が聞こえたが、構わずおひさんが座っている場所まで移動して、ゾムを投げ飛ばした方向に身体を向ける。
横にいるおひいいさんは、ぽかーんとこちらを見ている。

「すみません、遅くなりました。あの、私、何かしましたか？」
「………………」
「姫様？」
「…………A」
「はい。あ、菓子は買ってきまし、た……あ」

ゾムに仕掛けられた時に菓子は無残に床に転がっている。
なんてこった。まだおまけのクッキーも食べてないんだけど。
うわーどうしよう。と思っていた時、笑いを堪える声が聞こえた。

「ふ、…っ、く、ふふふ、ｗｗｗｗｗ」

絶対、この笑い方は草生えてるよ。見えないけど。

笑い声の先には、

「グル氏、笑いすぎやで」

笑う男を呆れたように注意する男は、黒髪が綺麗に整えられ、緑の軍服を着た、トントンだと思われる姿をしていた。
もう一人、楽しそうに、愉快だと言っているかのように笑い、こちらを見た瞳に、息が止まった気がした。
金髪にとても映える赤い眼は、とても、怖いほど綺麗だ。

「くく、いや、失礼。あのゾムが投げ飛ばされるなんて、そうそう見れないだろう？」

なあ？と同意を求めるように、トントン…らしき男に同意を求める。
同意を求められた男は、まあ、と困ったように返事をする。
さて、といきなりこちらに視線を戻し、私でも分かるぐらいの悪ーい笑顔でこちらを見てきた。

うん。良い予感しないお。

「うちの者が失礼したな。最近は物騒だからな、用心をしすぎて申し訳ないことをした」
「いえ、紛らわしい私のせいです」

なんだ、なんだ…この違和感。
丁寧に謝罪の意を込めているのはず、だがあまりに、この男の声は、嬉しそう？

「菓子はあとで新しい物を持ってこさせよう」
「いえ、そこまでして頂かなくても、」
「気にするな。ああ、そうだ、」

あ、やばい。
そう思った時にはもう違和感の正体がようやく分かった。

「名前を教えてくれるか………付き人殿？」

グルッペン・フューラー。
こいつ最初から知ってやがったわ。