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彼女は、忙しさに置いていかれた身体をずるずると引きずって、異能特務課の本部ビルヂングを後にした。
陽は落ち真っ暗のエントランスを出る。
「はぁ…信じられない」
過労で倒れそうで、彼女は疲れきった顔を持ち上げる。
デスクに向かいすぎて肩凝りなのか将又別の疲れから来る痛みか分からないそれから、重たい両腕はだらりと重力に負ける。
右手に持つ鞄が指数本でぶら下がっていることがもはや奇跡に近い。

ビルヂングから一歩出たところ、ふと時計柱を見上げれば、時刻は既に0時を過ぎていた。本日は、26日である。たったさっきクリスマスは終わりを告げたのだ。
その時計柱がすっかりとクリスマスの装いになっていた。
もみの木と真っ赤なリボンに、ゴールドのポインセチア。
0時半を知らせる時計柱の光が、ちょっとチープな飾りすらもキラキラと輝かせた。
その装飾を見て既に、この仕事が5年と経ったのだと、彼女は自分を褒めて遣わした。

彼女が異能特務課のエントランス受け付け嬢を受けたのは、給与の高さだった。
今思えば、給与の高さは納得の範疇である。
身体の重さがその対価。出来ることなら反比例して欲しいと願うばかりだ。

ホタルの光かと思う程、ヨコハマの並木道に並ぶ木々は、装飾されていた。
こんな時も人間様のクリスマスに付き合わされるのだった。
そうだ、並木も仕事をしているのだ!
そう都合のいい設定をこじつけて、彼女は満足そうに「ふふ」と笑った。
「私は仕事あがりだけれど、あなた達は正月まで仕事ね」
疲れからか、遂に遠目に見えた並木にぼやく。

なんとか同じ犠牲者を生み出したかったのだろう。
ぶるっと身体が寒さを思い出して、帰路に付くため、脚を並木道へと向けた。

クリスマスの装飾は温かみのある灯り。
オレンジ色の並木道は、キラキラと輝く宝石のトンネルの様。
彼女の仕事の疲れでクリスマスを恨む心は、あっという間にどっか行ってしまった。
こういうものは、全く知らない世界ではなく、知っている景観が変化するから楽しい。

街行く人々の冬の装い。
彼女は自分がマフラーも手袋もしていない事に気が付いた。
仕事が忙し過ぎて、冬服も買ってなければ、気にもとめなかった。余裕もありはしなかった。
やや女を捨て過ぎたかと、不意に斜め上を見る。

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ゆう(プロフ) - うわあああ!めっちゃ好きです!ありがとうございます!安吾の踏み込めない描写がすごい安吾らしいなって思いました! (2018年2月23日 20時) (レス) id: 900a78131d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2018年2月22日 17時

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