微妙な距離感 ページ11
.
朝。
いつもより早く目が覚めたAは、通勤通学時間の集中する時間帯をなるべく避けようと素早く身支度を整え家を出た。
毎朝の満員電車で心身ともに疲れきってしまうのが悔しいので、少しでもクオリティーオブライフを高めようという試みなのである。
(あれ…？勝己？)
最寄駅までの道中で、見慣れた金髪ツンツン頭が目に入った。
嬉しくなって小走りで駆け寄り後ろから肩を叩くと、振り向きざまにてめェかよという顔をされる。
『おはよ！早いねいっつもこの時間？道理で朝会わないわけだ』
「わりィかよ。凡人とは発想が違うんでね。時間を少しでも有意義に使おうとしてんだよ俺は」
『こんな早くから学校行って何してんのさ？ホームルームまでかなり時間あるっしょ』
「走るか筋トレ」
『げっ…何この人怖すぎるんですけど。トレーニング終えていっつもあの涼しい顔でホームルーム受けてんの？体力無尽蔵か…』
Aが少し引き気味にからかうと、すぐさま額に青筋を立てて睨みつけてくる。
「は？なんだとてめコラ」
『いやド短気か！そのキレ癖まじでどうにかした方がいいよ。つーかいっそのこと一回脅迫罪とかで捕まんないかなわくわく』
「なんだとコラ爆破すんぞ！」
『テロリストじゃん！言動がもう町内のちょっとしたテロリストじゃん！逮捕されたのちに死刑もしくは終身刑になってほしい！』
「うるせえな減刑しろや」
『おっといいのかなそんな態度とって。情状酌量の余地一切なし！』
堪えきれずAが声をあげて笑うと、勝己はフンと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
なんてことない幼馴染との会話であるが、Aは内心嬉しくて仕方なかった。
こんな風に勝己と軽口を叩いて笑うのは久しぶりだった。
実践演習の帰り道以来、自分に対する勝己の態度が、ほんの少しではあるが柔らかくなっているような気がする。
小さい頃はよく一緒に遊んだりふざけたりしたものだが、中学校にあがってからは勝己のトガり具合に磨きがかかったことや、Aが女友達とよくつるむようになったことから、少しずつ疎遠になっていった。
ことに、彼の性格上仕方のないことかもしれないが、勝己からAへ話しかけることはほとんどなく、一抹の寂しさのようなものをAが感じていたのも確かである。
Aは嬉しかった。
勝己や出久とまた昔のように話せることや、触れられる距離にいることが。
『……ねえ勝己。なんで私のこと雄英に誘ったの？』
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 299人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
スカイ(プロフ) - コメ返してくれてありがとうございました！めっちゃ面白い...最高です！今後に期待します！ (2018年6月19日 20時) (
レス) id: fe3517b453 (このIDを非表示/違反報告)
卯月(プロフ) - スカイさん» 感想ありがとうございます！勢いで書きなぐっておりますが、楽しんでいただけたようで嬉しいです＾＾ (2018年6月17日 23時) (レス) id: 23b7097a95 (このIDを非表示/違反報告)
スカイ(プロフ) - 本当に好みのシチュです！完結まで絶対見ますねー (2018年6月17日 19時) (レス) id: fe3517b453 (このIDを非表示/違反報告)
スカイ - 面白いです！頑張ってくださいね！ (2018年6月17日 16時) (レス) id: fe3517b453 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：卯月 | 作成日時：2018年6月13日 14時
