頼ってもいいのに ページ10
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駅の階段を一気に駆け上がる。
人混みを進みながら周りを見渡していると、視界の片隅に電車に乗り込もうとしている金髪トゲトゲ頭の雄英生が入った。
勝己だった。
『勝己！』
急いで勝己の乗り込んだ車両を目指して走り出すと、電車の発車を告げるメロディがホームに流れ始める。
ドアが閉まります、ご注意くださいのアナウンスとともに電車へ滑り込むと、ほどなくしてドアは閉まった。
電車が動き出す。
息を切らしていると、後ろから肩をど突かれた。
振り向くと、なんでテメェがここにいるんだよ、という顔で勝己が立っている。
『わー、よかった…間に合わないかと』
「駆け込み乗車してんじゃねえよ」
それだけ言って、勝己はAの隣に並ぶと、いつものように車窓からの景色に目をやった。
同じようにAも外を眺める。
出久に言いたいことを言えたからだろうか、勝己は少しは元気が出たようだった。
話したいことは沢山あるが、あれこれ言い出せる雰囲気でもなかったので、Aも特になにかを言ったりはしなかった。
二人の間に、幼馴染特有の、心地よいともとれる沈黙が流れている。
意識して身を寄せ合っているわけではないが、普段二人で電車に乗っていてもけして触れ合うことのない肩と肩が、今日は触れ合っていた。
近くにいるよ。
そばにいる。
そんな想いが、触れ合う肩から伝わればいいなとAは思った。
すると、想いが伝わったのかどうかは定かではないが、勝己は、Aの首に自分の顔を埋めるようにして乗せた。
突然のことに驚いたものの、拒む理由もないのでそのままにしたが、自分の鼓動が勝己に聞こえてしまうのではないかとAは気が気でなかった。
どこまでも不器用でプライドの高い幼馴染が、言葉にはせずともこうして弱った姿を見せてくれていることが急に可愛く思えて仕方がなかった。
首元にすり寄っている様子は小さな子どものようで、思わず頭を撫でると、「調子に乗んな」とぴしゃりと言われたので渋々手は引っ込めた。
首に当たる毛がくすぐったい。
肩に乗る重さが何だか誇らしい。
奇妙な心地よさを残したまま、二人が降りる駅までそれは続いた。
電車を降りると何事もなかったかのように勝己は歩き出したので、Aは少し笑顔になって後を追った。
『…もっと頼ってくれればいいのに』
「あ"？」
『何でもないですう』
…思っていたより、そばにいることを許されているらしい。
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スカイ(プロフ) - コメ返してくれてありがとうございました！めっちゃ面白い...最高です！今後に期待します！ (2018年6月19日 20時) (
レス) id: fe3517b453 (このIDを非表示/違反報告)
卯月(プロフ) - スカイさん» 感想ありがとうございます！勢いで書きなぐっておりますが、楽しんでいただけたようで嬉しいです＾＾ (2018年6月17日 23時) (レス) id: 23b7097a95 (このIDを非表示/違反報告)
スカイ(プロフ) - 本当に好みのシチュです！完結まで絶対見ますねー (2018年6月17日 19時) (レス) id: fe3517b453 (このIDを非表示/違反報告)
スカイ - 面白いです！頑張ってくださいね！ (2018年6月17日 16時) (レス) id: fe3517b453 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：卯月 | 作成日時：2018年6月13日 14時
