いちばん好きな人

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終業式が終わって、成績表や必要なプリントも渡して、新学期はまた元気に会いましょうと締め括って下校する生徒らを見送った。

大毅には今夜はハンバーグやとこっそり伝えたら、やったぁ！って喜んでくれた。

張り切って昼ご飯食べた後にノートパソコンでネット検索。

「ハンバーグ レシピ っと」

出る出る。
いっぱいあり過ぎてどれ見たらええんやろー？

和風とか美味しそう。大根おろしとかいいよね。

画像があったからマウスをポチッと。

「お昼ご飯食べたのにそんなん見て、どんだけ章ちゃん食いしん坊やねんさ？」

後ろから声を掛けてきたのは同僚の丸山先生。
ひとつ年上の彼の事を普段はマルって呼んでる。

ほいって、コーヒーの入ったマグカップを机に置いてくれた。

「ありがと。夕飯にハンバーグ作ろうと思ってんねんけど、どんなんしようかなぁって」

「俺やったら煮込みハンバーグ食べたい。ちょ、自炊なんてしてた？もしかして彼女出来たとか！」

「自炊はたまにしてるもん。ハンバーグは作ったことないけどな。…煮込みかぁ、今の時期暑ない？」

「彼女はスルーかーい！」

「はは、出会いあらへんのにおる訳ないやん」

「章ちゃんモテんのに、まんべんなく優しいからいい人止まりやねんよなぁ」

「もぉ、それ褒めてんの？けなしてんの？」

マルもそうやんって言ったら、頰を摘まれた。

「そのスキンシップやめいって」

ええ大人が何してんねんって突っ込む。
けど、マルはへこたれへん。

「自炊の腕上げるより、作ってくれる相手探す腕上げようよ？ てことで、近々いつもの居酒屋で作戦会議なぁ」

「普通に飲みに行こうって誘ってーな」

「えへっ。さっすが章ちゃんわかってるー！ では、午後の研修へ行って参りまぁす」

職員室を出て行くマルを見送って、パソコンに向かう。

明日から子供らは夏休みでも、教師は普段通り学校に来て仕事をする。

授業がないだけで、マルみたいに交代でよそに研修を受けに行ったり、夏休み中に開催されるプール教室の指導をしたり。

俺の場合、補習学習のプリント作成もあるんやけど、それは最終チェックしたらOKやな。

「ハンバーグ、ハンバーグ…あ、豆腐ハンバーグある。あとは…おから？何、それ。──やっぱ大毅にはこれかなぁ？」

定番のデミグラスソース。付け合わせに人参とブロッコリーとか。

材料と作り方をメモして完璧やーって、パソコンを閉じる。



大毅、喜んでくれたらいいな。


大倉さんも。


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