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時計が18時を回っても、としみつは現れない。
20分、30分と経って、車を見つめる集中力が切れてきた頃。
襲いくる眠気に負けそうになる。
そういえば、昨日は緊張してなかなか眠れなかった。
あ、やばい。寝そう。
目を閉じた、その時。
コンコン、と車の窓がノックされた。
飛び起きると、窓の外に、大好きな人。
あぁ…かっこいい…。
思考が停止しそうになるのを抑えて、慌てて車から降りる。
と「こっち」
駐車場の柱の影に、手招きされる。
と「視聴者さん、まだ結構いたから」
としみつの手が、私の腕を掴む。
柱の影に二人で入る。
近い。近いよ。
『びっくりした。覚えててくれたの?』
と「うん」
返事は短い。
30センチもない距離にあるとしみつの顔。
わたしの顔は見てくれない。
『でも、なんで…』
なんで、あんなメモ渡したの?
と「…ファンやん」
『ん?』
と「だめやん。普通に超ファンだもん」
『?』
ごめん、全然言いたいことがわからない。
ハテナが浮かぶ私の顔をちらっと見て、としみつがため息をつく。
なんかよくわからないけど。
だめじゃん、とかため息とか。
なんか、良くない方向な気がする。
『ごめん、今日、私イベント行かない方が良かったよね』
と「は?…あぁ、いや、違くて」
うーん、と困った顔で髪の毛を触るとしみつ。
これはつまり、もうイベントとか来るなって言うために、ここに呼んだってことだよね。
推しに嫌われるのって、すごい辛いな。
あ、泣きそう。
『もう行かないようにするね』
行かないように、できるかな。
大きいイベントなら気づかれないかな。
なるべく我慢するね。
こんな所で泣いたら、余計嫌われちゃうから、慌てて手を振る。
『じゃあ、今日はありがとう!お疲れ様!』
と「え、待っ…」
顔を見られないように、後ろを向いて、そのまま車に乗り込む。
さよなら、推し…。
画面の向こうから、これからも応援してる。
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こは(プロフ) - 胸が…ぎゅーーーってなった……すきです…ありがとうございました…(?) (2020年4月23日 12時) (レス) id: 78e7bcbdad (このIDを非表示/違反報告)
ぴ(プロフ) - う、うわぁ、ありがとうございます、ちゅっちゅさんの文才ありすぎ羨ましいです、、、頑張ります泣 (2019年7月19日 8時) (レス) id: f2a0ee3fb7 (このIDを非表示/違反報告)
ちゅっちゅ(プロフ) - ぴさん» ぴさんの見てます!(笑)がんばってください(笑)ありがとうございます!! (2019年7月19日 1時) (レス) id: 28ddd181e2 (このIDを非表示/違反報告)
momo(プロフ) - 何回読んでもキュンキュンさせられます! (2019年7月13日 1時) (レス) id: af508cf9f8 (このIDを非表示/違反報告)
ハルキ(プロフ) - キュンキュンが止まらない作品でした!ありがとうございます!また新たな作品も楽しみにしております! (2019年7月12日 7時) (レス) id: 08df1f4a97 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゅっちゅ | 作成日時:2019年6月12日 1時