アソビゴコロ３【川村壱馬】

過去 ページ9

壱馬side.




ソファを降りてラグの上に座って
おいで って足の間に座らせた

後ろから抱きしめて
逃げられないように
離れられないように

こわかったから
Aを捕まえておかないと
どこかに行ってしまいそうだったから

北人に言われた言葉を思い出して
ゆっくり息を吸って吐く






壱｢…俺の父さんさ、俺のせいで死んだの｣


『……え？』


壱｢公園でキャッチボールしてて、俺が取り損ねて道路に飛び出して…、その時、車…来てて…｣






今でも思い出す

あの時の父さんの俺を呼ぶ声と俺を突き飛ばした衝撃
その瞬間視界が赤く染まって
子どもながらに感じた鉄の臭い






壱｢その時、母さんもいて…目の前で父さんが死ぬとこ、見てたんだ｣


『…そんな、』


壱｢母さん、すごい優しくて、いつも壱馬、壱馬大好きよって…言ってくれてたんだけど…｣


『…、』


壱｢父さんが死んでから、人が…変わって…｣


『壱馬先輩、』


壱｢壱馬が殺した、壱馬のせいで、って…おかしくなって｣






…思い出す
体が震える
鳴り止まない怒声と罵声

ひとりぼっちにされた時間

壱馬が死ねばよかったのに、と泣かれたあの日






壱｢母さん、父さんのこと大好きだったから…俺が許せなかったんだって、。なのに、顔は父さんそっくりだし、俺がいると父さんを思い出すって、壱馬がいなければあの人は死ななかったのにって…言われて…｣


『…っ、』






抱きしめている腕をAが握った

その手もなぜか震えていて
こんなちっちぇー体で
一生懸命こんな重い話受け止めようとしてくれてんだって分かって

抱きしめる腕に力を込めた






壱｢育児放棄、ってやつされてた時に父さんのお兄さんが家に来て、俺と母さんの状況を見て、とりあえず俺を連れ出したんだ｣


『お兄さん…、』


壱｢母さんはいつの間にか精神病院に入院してて、俺は叔父さんの家に世話になることになってた｣


『にゅう…いん…、？』


壱｢…うん。で、叔父さんの子どもが、ララハ。あいつは俺のいとこで、何年か一緒に住んでた｣






いとこ、って言った瞬間に
Aの肩の力が少し抜けた

…もっと早く言えばよかったな、
ララハの話したら
俺の過去も知られるんじゃないかと思ったら
言えなかった、




.

染み→←瞳

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す