アソビゴコロ３【川村壱馬】

絶対、永遠 ページ32

壱馬side.




頭の中でAの声がこだまする
俺のことを、愛してる？

…知らない
愛って、なに？
どうしたら愛してるなんてわかる？
過去の俺なんて知らないのに
どうして過去の俺まで愛してるなんて言える？






壱｢…嘘、つくなよ。昔の俺なんて…知らないくせに、｣






自分でも驚く程の掠れた声だった

自信がない
こんなにも綺麗なAの愛を受け入れられる自信が…ない






『知らない、けど…。けど！壱馬先輩から過去の話聞いて、わたしが壱馬先輩の支えになれたらって思った』


壱｢支え…？｣


『壱馬先輩が、あーもう、うぜぇ！！って言いたくなるくらいに、昔のことなんて思い出さなくなるくらいに、毎日そばにいて、愛したいって思った、！』


壱｢…、｣






…俺は、Aといる時に思い出したことなんてない
知らずのうちに、忘れさせてくれてた？
一緒に居て、安心してた分
いつの間にか姿が見えなくなった時にあんなに焦ってた？

俺はいつの間にか…Aがいないとダメになってた
好きでいて欲しいと願うようになってた

それは、つまり…
俺はこいつのこと…






『壱馬先輩が幸せになるなら、この命だって惜しくないです』


壱｢A…、｣


『壱馬先輩のこと、愛してます…』






こんなにまっすぐで
純粋で
無垢な愛があったんだ

知らなかった
愛されるって、こんなに幸せなものなんだ

…知らなかった、というより忘れてたのかもしれない
俺はずっと、誰かに愛されたかった
必要とされたかった

寂しさを埋めるために
玩具としてAをそばに置いた

こいつならめんどくさくなさそう

そう思って玩具にしたのに
すぐ泣くわ
好き好きうるせーわ
勝手にへこむわ
ろくなことしなかった

…なのに、手離せなかったのは
Aに愛されてることが伝わってたから
Aに愛されてることが嬉しかったから

ただ…それだけなんだ






壱｢俺は…｣






一般的には、俺の気持ちを伝えるのが普通なんだろうけど
ある感情が邪魔をしてうまく話せない

…こわい

もし俺も同じだと話したら
きっとAは泣いて喜ぶ
幸せだと泣いて、いつもと変わらずに俺のそばにいるんだろう

…でも、その幸せが続かなかったら？

父さんみたいにいきなりいなくなったり
母さんみたいにいきなり変わってしまうかもしれない

絶対なんてない
永遠なんてない

きっと心にあるこの感情は
今までの俺になかったものなのに

伝える勇気なんて…ない




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