アソビゴコロ３【川村壱馬】

小さな背中 ページ27

壱馬side.




どこ行ったんだよ
そんなに多くない人
そんなに広くない場所

なのにAはいない

勝手にどこかに行くような奴じゃない
でも、俺たちが近くにいたのに誰かに連れてかれることは考えにくい

だとしたら…なに？
なんでAはいない？

北人と翔吾も一通り探し回って
Aとはぐれたクレープ屋の前に戻ってきた






翔｢3人で探してもおらんってどういうこと？｣


北｢勝手に帰るわけないよね…｣


壱｢A…っ｣






手が震え出した
乗り越えたと思ったのに
体には刻まれてる昔の記憶

もう…失う思いはしたくない
それなのにどうして…Aはいない？

北人が いっそ放送とかで呼び出してもらったら… って話し出した時
話す北人の肩越しに男の子を抱えたちびが覚束無い足取りで駆けてくる姿が見えた

あれ、って…






壱｢A！！｣






周りを気にすることもなく出した大声

子どもの影から顔が見えた時には既に
Aに向かって走ってた

壱馬先輩、そう聞こえる前に抱きしめて
存在を確かめる
…だけど、明らかに邪魔な存在






れ｢…A、｣


『あっ、と…さっき言ってたね、お友だち』


壱｢…は？｣


れ｢Aのともだちか！おれ、れんと！｣






聞いてねぇよ、って心の中で突っ込みながら
れんと と言った野郎を見る
こいつ…子どもだからってAに抱っこしてもらってこんなに密着してんの？

…ふざけんなよ、がきんちょ






北｢よかった、どこ行ったかと思った…。この子どうしたの？｣


れ｢あそんでた｣


壱｢お前に聞いてねぇんだよ｣


れ｢…｣


『ちょ…っ、壱馬先輩！子どもなんだからもっと優しくしてください！』






…はぁ？
こんな見ず知らずの子どもに優しくしてやる意味がわかんねぇ
それに、Aって呼び捨てしてるし
無駄にくっついてやがるし…






翔｢迷子か？｣


『それが…』






れんとから聞いたであろう話を小声で俺たちに伝える
その間、れんとはビーチボールを抱えながら
Aの首にすがりついてた

…寂しかった、か

小さなれんとの背中に昔の自分を思い出す
理由は違えど、寂しいと訴える背中






壱｢れんと｣


れ｢…？｣


壱｢遊ぶか｣


れ｢……Aがいい｣






てめぇ、と出かけた声をしまう

今こいつはきっと母親に会いたい
でも、手のかかる弟の世話が大変な母親とは遊べなくて
父親はきっと仕事で
ただ、寂しいだけなんだ




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