アソビゴコロ 〜Wedding？〜８【川村壱馬】

あの時 ページ17

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離れる様子もなく、抱きついている壱馬先輩に意を決して聞いてみる






『な、なんて…呼ばれたいですか？』


壱｢…かずま｣


『うっ…、！』






何となく舌っ足らずな名前の言い方に
胸がきゅんとして苦しくなった

確かに壱馬先輩はずっと A って呼び捨てしてくれてるのに…
わたしは恥ずかしいから、慣れないからって
いつまでも先輩呼びして…

でもいきなり呼び捨てはハードル高くない…！？
川村先輩から壱馬先輩にするのだって大変だったのに






『…練習しておきます』


壱｢…いつまでに？｣


『け、結婚式まで…？』


壱｢言うたな、絶対やで｣






にや、といたずらな笑顔でわたしを見る壱馬先輩
かわいい壱馬先輩にしてやられた気もするけど
いつか名前で呼びたいっていう気持ちもあったから
いい機会になったはず






『お約束、します』


壱｢じゃあ、名前呼べるようになるまで俺もちびクマの名前呼ばないようにするわ｣


『なんで！？』


壱｢フェアじゃないから｣


『どうしても名前呼ばなきゃいけない時は…っ、』


壱｢んー…、ちびーって呼ぼうかな｣


『貶されてる…』


壱｢愛称じゃん｣


『悪口です！』


壱｢わかったよ、クマな｣


『もっとやだ！』


壱｢はぁ〜？じゃあ、あれだ。きゅまちゃん｣


『へっ…』


壱｢懐かしいし、いいだろ｣






きゅまちゃん、は壱馬先輩がつけてくれた
大事な大事なあだ名
もう一生それで呼ばれることはないと思ってた

いろんな意味でまずい
昔のあんなことやこんなことを思い出してしまう
うれしいんだよ、もちろん
でもなんか…変な気持ちになるというか…






壱｢…何その不満顔｣


『あ、いや…っ、いろいろ複雑で…』






そう言った時、ゆっくりと壱馬先輩がわたしの体を倒した
柔らかく頬に手が添えられた






壱｢たぶん、きゅまちゃんが知ってる俺は…俺じゃない｣






ゾクン、って体が勝手に反応する
あの時と同じ
髪をゆっくりと耳にかけられて
芯から熱くなっていく






壱｢夢壊されたくないなら…今すぐ逃げな？｣






わたしがあの時見てた優しい笑顔
思い出す
わたしと壱馬先輩だけの、尊くて大切な思い出






『…覚えててくれたんですね』


壱｢…あの時、逃げてたら今はないからな。嫌になるくらい…ちゃんと覚えてる｣






言葉とは裏腹に瞳は優しく揺れていて
どちらからともなく微笑み合った




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