アソビゴコロ 〜Wedding？〜８【川村壱馬】

この間 ページ32

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『な、んで…いるの、？』


＊｢なんでって、ここの生徒だもん｣


『あ…そう、なんだ』


＊｢別に追いかけてきたとかいう訳じゃないから。勘違いしないで｣


『…、』


＊｢ていうか、ほんとに覚えてる？わたしのこと｣


『野木さん…』


野｢ふぅん。やっぱり嫌な記憶って残ってるもんなのね｣






間違ってなかった
まだ壱馬先輩の玩具だったあの頃
嘘つかれて旧校舎に行って
知らない男の人に襲われそうになって…






『…っ、』






忘れてたのに
鮮明に思い出される光景
殴られて、痛くて
無理やり、触られて

あ…、やだ

ゾワゾワとした気持ち悪い感触が肌を伝う気がした






野｢あれ、思い出しちゃった？泣きそうな顔して。そんなに嫌だったの？｣


『…はっ、』


野｢いいじゃない。結局今幸せに過ごしてんでしょ？…' この間 'も怖い目に遭った時に大好きな壱馬先輩に助けてもらったんだもんね？｣


『この、間…？』






震える腕を押さえつけながら野木さんが言ったことを反芻した
最近怖い目に遭った話なんて、3ヶ月前のあれしかない
なんで知ってるの
もしかして、勝手にサイトに登録したの…って






野｢パスワード、壱馬先輩の誕生日にするなんて単純すぎ…だよ？｣






小さな声で言った後、にやりと笑ってわたしの手首を握った






野｢なんで…もっと壊れなかったの…｣


『いっ、た…！』


野｢隣にいるのはわたしだったはずなのに…！｣






ギリギリと力を込められる手首
痛い、痛い






＊｢Aちゃん？｣


野｢っ…！｣






パッと手を離し、友だちから逃げるように野木さんは走っていった






＊｢どうしたの？大丈夫？｣


『だ、じょぶ…』






震えと涙を隠すように友だちから顔を逸らした
この後予定ができた、と早口で伝えて
戸惑う友だちにバイバイをした

握られた手首を見ると
ほんの少し赤みがかっていて
ズキン、とまた痛んだ気がした

まさかこんな近くに野木さんがいたなんて
あの言い方だと、まだ壱馬先輩のこと…

大学の門まで行って
吉野先輩にメッセージを返した


大丈夫、大丈夫
もう何もされないはず
大丈夫、大丈夫…


不安を打ち消すように
何度も何度も 大丈夫 と心の中で呟いた




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