アソビゴコロ 〜Wedding？〜７【川村壱馬】

気づかないフリ ページ8

壱馬side.




壱｢はぁ…っ、はぁ…、…っんで読まねぇんだよ…！｣






いつまでも既読にならないメッセージを見ては
焦りで頭がいっぱいになる
昨日の夜、いつの間にか意識がなくなってて
朝起きたら全部思い出してた

ご丁寧に記憶を失ってた時間の出来事もおまけでついてきた
だから俺がAに言った傷つける言葉も全部、分かってる
声出ねぇなら電話しても意味ないかと思ってメッセージにしたのに
読まないんだったら意味がない

ユウちゃんなら知ってるかと思って聞いてみたのに
俺と一緒にいないことさえ知らなかった
バカだからひとりで何とかしようと思ったんだろうけど
Aは守られて生きてく人間だから
ひとりでなんて無理に決まってんだよ

星羽のとこにいる保証もないけど
北人が一緒にいるとこ見たっていう言葉を信じて
ひたすら走ってた

バイク乗ればよかったのに
そんなことより早くAんとこ行きたくて
少し痛む頭も無視して走り続けてた






壱｢つい…っ、た…！｣






星羽の家のマンション
エレベーターを待つのも惜しくて階段を駆け上がる
部屋の前に来てインターホンを押したのに
何も反応がない






壱｢A…！Aいんのか…っ？星羽！｣






焦りのせいで荒っぽく扉を叩いてしまうけど
そんなの気にしてられない

早く、早くそばに行ってやんなくちゃ
Aの心が死んでしまう

うんざりするほど
Aの頭ん中は俺だらけで
俺のために生きることが幸せって思ってるような奴だから
俺に忘れられて
俺に突き放されて
平気だったはずがない

声出なくなったのだって
俺が原因なんだろ？

無理して笑顔作って
冷たくされても俺のために尽くしやがって
ほんとにバカなんじゃねぇの

自分はしんどくてしょうがなかったくせに
なのに俺がご飯食ってる時とか
会話した時に
幸せそうに笑ってそばにいた

ただそばにいた

不安だった記憶をなくした俺のそばに、いてくれた
自分の気持ち殺して、我慢して
あいつが頼れる場所はなかったのに






壱｢く、そ…っ！｣






…だから、星羽のとこに行ったのか
星羽もバカ正直で真っ直ぐな奴だから
俺を事故に巻き込んだ罪悪感とかじゃなくて
ただAを守りたかっただけなんだろうな

Aは…星羽のこと…






壱｢…っ、｣






ズキ、とひどく痛んだ胸に気づかないフリして
また走り出した




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