貴方には言わない (ページ4)

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段々と冷静になってきた。

中原の顔が私に同情の眼差しを向けている。

『そんな目で見ないで』

ちら、と隣を見ると太宰も似たような表情をしていた。

『何も分からないくせにそんな目で見ないでよ！！』

喉を枯らして叫ぶと中原が私の首から手を離した。

ドサッ、と私の体が地面に落ちる。

『…あはは、はは、なんで、好きで生まれてきたわけじゃないのに…』

ゆっくりと立ち上がって太宰達に背を向ける。

『好きでこんなんになったんじゃ無いのに。』

『…もっと普通に学校行って、普通に生きたかったのに』

足を前に前に進める度に涙が溢れる。

『こんな惨めな人生なら、生まれてこなきゃ良かったなぁ…』

後ろに気配はもう無かった。

先程の銃撃戦の倉庫の壁にもたれ掛かりながら目を瞑った。

誰かが実は生き残ってましたー！って、殺してくれないかな

とか有り得ないことを願いながら。

中原side

『おい、太宰』

「何」

『どうすんだ、彼奴』

彼奴、とはついさっきまで殴りあっていたあの女の事だ。

「なぁに中也、もしかして情が湧いちゃったのぉ？？」

太宰がニタニタしながら近付いてくる。

『違ぇよ、ただ…腕折っちまったのは、やりすぎたっつうか』

腕が折られた瞬間彼奴の顔から表情が全て落ちた。

感情も意思も全部落ちた感じがした。

一人の人間から生き甲斐を奪ったような気がして胸糞が悪かった。

「中也。任務はまだ終わってない。あの子を保護するまでが僕達に任された仕事だ。」

「多分今頃あの子はどこかで何かを諦めて目を瞑ったまま意識を手放そうと頑張ってるところだろうね」

「今が1番楽に捕獲できる時だよ。どうする？」

太宰が意味深な笑みを浮かべて俺に問う。

成程。

全部予定通りって事か。

全てはこいつの手の上で回ってたっつーことか

『するに決まってンだろ。あんなところ見せられて放っておけるかよ』

『首領なら彼奴に新しい生きる意味を見出してくれる。いや、俺が見出してやりてェと思った』

生きてきた境遇が何処かしら似ているからだろうか。

唯一の居場所から手放された時の恐怖感と怒りは経験したことがある。

「言うと思ったよ。全くお人好しなんだから」