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「太宰さん、僕への命というのは。」

「私を攻撃したまえ。」


は?
そう私と、芥川君──歳上なのか歳下なのか
判らないからそう呼んでいいのか確信はないが──は声を揃えた。
この男、正気なのか。


「その故とは。」

「彼女に私の、そして君の異能を見せてやろうと思ってね。」


目を細めて私を睨む芥川君のその気迫に、
私は体を硬直させた。
こうもマフィアの人間は皆揃って眼力があるのか。


「この娘は一体何者なのです?」

「大量殺人現場に1人生き残った奇跡の少女、かな。」


嫌味とも取れるその紹介。
私は苛立ち、太宰さんを睨みつけた。
何が言いたいのか、ヒシヒシと伝わってくる。

そんなに私を殺人者に仕立てあげたいのか。


「彼女も又、異能の者であると。」

「そういうこと。」


サァ、と腕を広げる太宰さん。
片方の口角だけを持ち上げて、表情で芥川君を挑発する。


「やってご覧よ、その君の愛しの "羅生門"で。
どうせ無駄なんだ、手加減なんて必要無いだろ?」


その挑発に、芥川君は嗤って応えた。
その瞬間、芥川君の纏う該当が変形し、
鋭い黒い刃に変わった。

その刃は真っ直ぐに太宰さんに向かっていく。
あまりのスピードに私は息を飲んだ。

しかし、太宰さんにぶつかる前にその黒い刃は消失した。

…これが、異能なのか。
現実なのか?それとも全て私の夢か。
後者であれば良いのに、そう思った。


「芥川君の攻撃がもし私に効けば、
彼は今私を殺しただろうね。」


その証拠に、とでも言いたげに
芥川君は太宰さんの横の壁を貫いた。
…本当はこう作用するのか。


「然し、私に異能での攻撃は効かない。
これが異能だ。ご感想は?」

「でも、私は違います。」


そうだ。今の出来事で確かに太宰さんと芥川君の
異能は証明された、それは認める。
然し、私が異能者である証明には到底ならない。

私は異能者ではないのだから、私は殺人者になど成り得ない。
そう信じたくて、そう信じて真っ直ぐに太宰さんを見つめた。

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作者名:はるんぱ x他1人 | 作成日時:2017年6月25日 21時

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