子分? ページ32
「お前どうやってやったんだ! すげえ!」
見たこともない血鬼術に心を躍らせる伊之助に、これはまずったかと苦笑いを浮かべるマールド。
「教えろ! 俺様の子分にしてやるから!」
「いつの間にお前の子分になったんだよ」
「俺様が親分だからだ!」
「回答になってねーよ」
どこまでも自分勝手な伊之助に、突っ込みすら放棄してマールドは血鬼術について話し出す。
「僕もまだよくわかってなぃだがな、さっきのは「血鬼術」つってな……鬼っていう化物の使う技みたいなもんだ」
「ほぉーん、どーりで人間とちょっと違うって思ってたぜ」
「勘はいいんだな」
「おうよ!」
自己肯定感が高いのだろう、ずっと胸を張っている。
「……そういうことだ。鬼は人を食う。近寄らない方が身のためだぞ」
「……でもお前鬼だろ」
「まぁ、そうだな」
「……食うのか?」
「食わんわ、まぁ僕が異常なだけだが」
「じゃあ大丈夫だな! 何せこの俺様の子分なんだからな!」
マールドは、こいつどうしようもない馬鹿だ、と思っている。
しかし、こうも思った。
根はしっかりしていると、自分勝手だが仲間思いでもある人物だということを。
「よーしじゃあ俺様は鬼をぶっ殺すなんか探してくる!
お前も生きてろよ!」
「おう、忘れたくても忘れねーよ。また会おうな。約束だ」
「……約束?」
「?」
約束の単語を耳にした瞬間、伊之助はきょとんとした表情を見せる。
「おう。きっとまた会おうって誓うんだ。」
「……山じゃ、誰がいつ死ぬかわかんねぇ。俺様も明日生きてるかなんてわからねぇ」
「でも僕は少なくとも簡単には死なねぇよ。小指出してくれ」
「? おう」
指切り拳万、嘘ついたら針千本飲ーます、指切った。
たまにやる指切り。
マールドにはなんてことないことだが伊之助には新鮮だったようで。
「……すげぇほわほわする」
「ほわほわ?」
「よーし! 俺様絶対生きてやる! また戦おうな!」
「……おう」
元気よく走り去る伊之助の背中に、また妙な擬音が増えたななんて呑気なことを考えるマールドであった。
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アスナ(復活)(プロフ) - 作品見ました!すごい面白くて引き込まれちゃいました! 更新頑張って下さい! (12月10日 11時) (レス) @page41 id: bbcff10712 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロロフィル@深緑の指揮者 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ugt8ragist4/
作成日時:2023年6月25日 8時