【クロスオーバー】失われし決意を探して【アンテ×鬼滅の刃】 (ページ31)

今日:10 hit、昨日:2 hit、合計:3,036 hit

伊之助ページ31

｢やいマリオ！｣
｢マールドだ｣
｢俺様と勝負しろ！｣

唐突な宣戦布告に何だと聞き返せば、

｢何故なら俺様は王だからだ！この山では皆俺様の子分なんだからな！｣
｢答えになってないぞ？｣

要するに新参のマールドも子分にしたいから戦って勝ちたい、そういうことなのだろうか。

｢あとお前ただの人間じゃねーな！どっちかっつーと獣だ！｣
｢そらは否定しないけどな……わかったよ、その代わり僕が勝ったら……着いてきてくれるか？｣

マールドの目から見て、この伊之助という男は天性の野生児。
知識はともかく才能に溢れた男であることはよくわかっていた。

｢よっしゃあ！｣
｢はいよ、この石が地面に落ちたらスタートな｣
｢何でんなことすんだよ！｣
｢公平性の為だ。純粋な力比べならさ、開始前からぶん殴ってそれで胸を張って勝ちって言えるか？｣
｢野生ならいつもそうだろ！｣

提案にも聞く耳を持たず、マールドに飛びかかってきた。

｢はぁ……｣
｢!?｣

溜め息を吐きつつ拳を受け止め、一本背負いの要領で投げる。

｢効くかっんなもん！｣
｢！おっと｣

投げられた瞬間上半身は受け身を取り、下半身で鋭く蹴りを放つ。
柔軟性と瞬発力が高いと判断したマールドは、今度は自分から仕掛けていく。

｢ふぅっ……！｣
｢うおおっ！｣

左の拳を紙一重で避けながら懐に潜り込んだ伊之助の首根っこを右手で掴み止める。

｢あっくそっ！てめぇっ！｣
｢速いな……｣

動体視力や戦闘センスは高い。
技術や作戦がややお粗末なところが目につくがそこは鍛えればどうにでもなるだろう。

｢離しやがれ！｣
｢……どうしたもんか｣

伊之助を持ち上げたまま思い悩むマールドだったが、その隙を伊之助は見逃さない。

｢うおおっ！｣

スポン。
そんな軽快な音と共に、伊之助の被る猪頭が外れ素顔が明らかになる。

｢!?｣

マールドが驚いたのは伊之助が抜け出したことではない。
その顔が女性にも似た大層綺麗な顔だったことだ。
言動さえどうにかなれば非常に人気になるだろう。

｢はぁああっ！｣

全力で振り抜かれた拳。
斜め前に飛び出しすり抜けたマールドは。

｢詰み、ってやつだ。【血鬼術正義・雷轟電撃】｣
｢うおおっ!?｣

マールドの手刀が首に刺さり、更に迸る電撃が伊之助を襲った。

流石にばたりと地面に伏した伊之助に、やっと終わったと息をつけば。

｢……何だ今の!? すげえ！すげぇっ！｣
｢……ダメだこりゃ｣

その頑健さに呆れることとなったマールドだった。