熾烈な消耗戦 ページ18
マールドの孤独な戦いは、一週間にも及んだ。
ひたすらに気合いと根性と決意、それとケチャップで耐え凌いできたが、それにもとうとう限界がやってきた。
「はぁっ、はぁっ……!」
「一体どれ程粘るというのじゃ!? 儂は怖い!」
「呼吸も日輪刀もない人間風情がここまで粘るとは……腹立たしい」
「まさか一週間も戦い抜くとは……ここまでの実力とは思いもしなかった」
「本当に何で生きてるんだい? 早く死んだ方が楽だよ?」
「早く鬼になれ! もう死ぬぞ! お前のような実力者を死なせるのは惜しい!」
「あぁ、なんと美しい! 無駄だとわかっていながら無駄な足掻きを必死に続ける人間のなんと美しいことか!」
「お兄ちゃん何でこいつ死なないの!? もうとっくに毒は食らってるでしょ!?」
「わからねぇが、梅、こいつはもう死にかけだなァ」
口々に文句を飛ばす鬼達に、全身血に塗れて削がれた身体を振るわせながら立ち上がり睨み付ける。
「うるせぇ……! まだ、まだ……!」
「喧しい」
振るわれた鬼の首領の触手。
それは万全の状態なら回避、あるいは防御できたであろう攻撃。
だが。
「がはっ……」
今この場において。
マールドには、回避行動を取ることすら出来なかった。
霞む視界、震える全身、朦朧とする意識、抜けていく血液、無くなる四肢の感覚、凍えるような寒さ、肺を刺すような痛み。
マールドはとっくに限界を迎えていたのだ。
そんな状態の彼が、高速の一撃を防げるか?
答えは否。
マールドの胸の中心を、無慈悲な鋭い刃が貫いた。
「ようやく捉えた……これで終わりだな」
ドクン、ドクン。
何かが注ぎ込まれるような感覚と共に、マールドの全身が激しく痛み出す。
「ああっ、がぁっ……! いっ……ぐぅっ……! あああああああっ!!」
悶え苦しむマールドを見下ろしながら、男は意地の悪い笑みを浮かべていた。
「この鬼舞辻無惨に逆らうからこうなるのだ。通常致死量の血を与えてやったが……せいぜい順応してみせろ」
言い表しがたい苦痛に苦しむマールド。
その薄れ行く意識の中、最後に感じたのは。
ベベン。
ここに来る直前にも聞いた三味線の音と、地面が左右に開いたことで生まれた落下する感覚であった。
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アスナ(復活)(プロフ) - 作品見ました!すごい面白くて引き込まれちゃいました! 更新頑張って下さい! (12月10日 11時) (レス) @page41 id: bbcff10712 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロロフィル@深緑の指揮者 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ugt8ragist4/
作成日時:2023年6月25日 8時