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 その後、書き取りの練習に戻りつつ、送られてきた動画を開いた。大輪の花が夜空に咲いているのが、若干ぼやけてはいるもののよく分かる。兄が撮影していた周りで見ていたであろう人々の歓声も入っている。
 祭りは楽しそうだ。少なくとも、兄はとても楽しそうにしている。自分が祭りに行けないのは仕方ないこととはいえ、その熱気は直接体験できていないにしてもひどく興奮するものだった。

 「ただいまあ!」

 兄はそれなりに遅い時間に帰ってきた。兄もまだ9歳の子供である。玄関から聞こえた足音は二つだったので、おそらく母が迎えに行ったのだろう。

 「お帰りなさい」

 「はいAさん、ただいまあ。動画見てくれたかあ?」

 「見ましたよー。花火、すっごく綺麗で、みんなとっても楽しそうでしたね……?」

 「そうそう。祭りは楽しいんだ。いつか、Aさんにも直接味わってほしいなあ。浴衣とか着て、射的やヨーヨー釣りなんかもして……あっそれで思い出した。これはお土産だ」

 兄が差し出したのは、キーホルダーだった。小さなピンク色のテディベアがついている。

 「射的でとってきたんだ。Aさん、こういうの好きだろう?」

 「……! ……♪」

 「よしよし、良い笑顔だなあ! 喜んでもらえると兄さんも嬉しいぞお」

 わしわしと頭を撫でられる。兄にこうして甘やかされるのは好きだ。自然、ぐりぐりと兄の手に頭を押し付ける形になる。

 「おおっ、甘えたさんか? ううん、これは寝坊助さんか? お眠かなあ、もう寝る時間だものなあ」

 時計はすでに10時をまわっている。普段のAの就寝時間は9時半であるから、夜更かし気味だ。ただ、起床時間が遅かったため、いまいち眠気が来ていない。よって、別にお眠なわけではない。
 兄もそれは察したらしい。

 「ううむ、眠いわけでもなさそうだなあ? よしよし、もっと撫でてあげるぞお! ついでに抱きしめてあげよう、ぎゅうううう……☆」

 「私からも、ぎゅうう……☆」

 「はっはっは、やっぱりAさんは可愛いなあ……☆ それじゃあ俺は部屋に戻ろう。あったかくして寝るように!」

 「はぁい、おやすみなさい……♪」

 兄が部屋を去ってから、Aは貰ったキーホルダーをペンケースに留めた。

 「うーん、『桃色』というよりも『桜色』ですね……? じゃ『さくら』と呼ぶことにしましょう……♪」

 ***

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Chris(プロフ) - 冬枯さん» コメントありがとうございます。嬉しさで机殴りながら返信打ってます(だって初コメ……初コメ……!!)。遅々として進まない筆で申し訳ありませんが、少しずつでも更新してまいりますので今後もお楽しみいただければ幸いです。 (2020年8月21日 20時) (レス) id: 313ba381d4 (このIDを非表示/違反報告)
冬枯(プロフ) - 楽しく読ませて頂いております!自分も友達から勧められ、新シリーズから始めた者です。流星の篝火は無理です。本当に無理。良い話すぎて泣きます。良さの反動と言えど、文を紡いでいくのはすごいと思います!これからも更新楽しみに待ってます! (2020年8月21日 19時) (レス) id: ec10afebdf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Chris | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/chrisinfo/  
作成日時:2020年6月13日 0時

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