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 6歳の夏のある日のことである。
 Aは体調を崩し、寝込んでいた。熱はないが、風邪の症状があり、悪化防止のため大事を取って静養を言い渡されていた。
 昼、日の高い時間に目が覚めた時に、近くに人の気配を感じなかった時ほど、微妙な気分になる時はない。寂しいというのとは少し違うし、むなしいというのとも違う。とにかく、微妙な気分なのだ。
 枕元に積んでおいた絵本をひとつ手に取り、Aはページをめくり始めた。
 ぱらり。ぱらり。

 「Aさあぁぁあん! 今帰ったぞお!」

 突如、静かな空間を賑やかな声が切り裂いた。いや、切り裂くという表現はあまりよくないかもしれない。その声は決して不快ではなく、むしろ優しく温かみのある声だからだ。
 同時に、部屋の襖がそこそこ勢いよく開かれた。

 「お帰りなさい〜」

 「うん、ただいま!いい子にしてたかあ?」

 「……」

 「あっその顔は、ついさっき起きたばかりって顔だな! 起こさなかった俺も悪いが、もう少し早く起きないといけないぞお」

 「分かってますよ」

 三毛縞斑。Aの3つ上の兄である。
 兄のことは嫌いではない。ちょっと賑やかすぎる気がするけれども、基本的には何でもできて何でも知っている人だと思う。もちろん、人間である兄が全知全能であるわけはなく、あくまでも"基本的"にすぎないことは承知している。

 「今日も、『あのおうち』へ?」

 「そうそう。今日は『神さま』には会わせてもらえなかったけど、わりと歓待されてきた。いやぁ珍しいこともあるもんだなあ! 俺はあの家の人々には嫌われてる方なんだがなあ」

 「……?」

 「ああ、いやぁ、こっちの話、うん。まぁとにかく、あの御家へ行って帰ってきた訳だ。さ、今日はどんな話が聞きたい? それか、昨日読んだ本のお話でも良いぞお。兄さんは何でも聞く準備ができている!」

 「そうですねぇ……今日は、『おそと』のお話がききたいです。今日は、『お祭り』の日ですね?」

 「そうだなあ。夜になれば花火が上がるはずだ。ひゅー、どどーんってなあ。Aさんにも見せてあげたいが、熱を出すと困るしなあ?」

 花火はいろんな色になるだろ? あれは炎色反応といってな、−−
 そうそう、お祭りだから屋台も出る。りんご飴とか、かき氷とか、わたあめとか……わたあめくらいは買ってきても怒られないよなあ? よぅしよし、後で買ってきてあげよう!

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Chris(プロフ) - 冬枯さん» コメントありがとうございます。嬉しさで机殴りながら返信打ってます(だって初コメ……初コメ……!!)。遅々として進まない筆で申し訳ありませんが、少しずつでも更新してまいりますので今後もお楽しみいただければ幸いです。 (2020年8月21日 20時) (レス) id: 313ba381d4 (このIDを非表示/違反報告)
冬枯(プロフ) - 楽しく読ませて頂いております!自分も友達から勧められ、新シリーズから始めた者です。流星の篝火は無理です。本当に無理。良い話すぎて泣きます。良さの反動と言えど、文を紡いでいくのはすごいと思います!これからも更新楽しみに待ってます! (2020年8月21日 19時) (レス) id: ec10afebdf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Chris | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/chrisinfo/  
作成日時:2020年6月13日 0時

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