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……結論から言うと、熱中した。編み物という新たな趣味は、Aを虜にした。編めば編むほどマフラーは長く美しくなり、作業した分の成果が目に見える形になるというのが、何とも楽しい。
隠すほどでもないので、Aは奏汰の目の前で編むことも増えた。
「さいきん、よく『あんで』ますね?」
ふと奏汰が声をかけてくる。
場所は奏汰の部屋。彼は【ショコラフェス】の資料を見ており、Aは赤い毛糸で手袋を編んでいた。
「思ってたより楽しくて」
「ふぅん?あんずさんや『あかおにさん』も、いつもたのしそうに『ぬって』いますけど、ちょうどおんなじかんじがします」
あんずさんというのはプロデューサーさんのことだろう、とAは思った。書類でも何度も目にした名前だ。奏汰の言い方からすると、どうやら衣装は手作りらしい。幾ら専属とはいえ、プロデューサーの仕事が多すぎやしないか……と思う。
後に、当時のあんずはほぼ全ての主な強豪ユニットのプロデュースに噛んでいたことを知り、Aは出来る限り彼女の雑用を引き受け、彼女の負担を減らすべく動くことになるのだが……。
閑話休題。
「『あかい』のは、ちあきにあげるんですか?」
「何となく編んでるだけですけど……」
「そうですか」
たしかに、贈る相手を千秋と想定しての赤い毛糸ではあるが、何となく編んでいるというのもまた事実である。Aには、千秋にバレンタインの贈り物をする理由がないため、贈る気はさらさらない。
練習を兼ねて赤い糸、上手く出来たら青い糸。次いでに紫の糸の作品も作る。その繰り返しだった。ちなみに紫は、兄へ贈ることを想定してのものだ。ぬいぐるみ用のマフラーにするはずが、楽しすぎて人間用のスケールでマフラーと手袋の一式を編み始めてしまっていることには、Aは我ながら少し呆れている。
かぎ針編みの編み方の本と睨めっこしながら、手を動かす。ある程度編み進めたところで編み目が綺麗に揃っているのを確認していると、また奏汰が口を開いた。
「『ごしょく』そろったら『りゅうせいたい』ですね」
「……たしかに」
Aは思い浮かべた。赤、青、黒、黄色、緑、この5色が流星隊のメンバーカラーだ。
奏汰を見ると、資料を手にしたままAに微笑んでいる。絶対この人、青いのは自分向けだと思ってるな。Aは思った。たしかにそうだが。
にこにこにこ。
「……考えておきます」
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Chris(プロフ) - 冬枯さん» 元々あんスタ知ったこと自体ツキウタ。がきっかけで、あんスタ→ツキウタ。→あんスタ(今)みたいな感じなんです。製本も、とりあえず自分用に作ってみて、満足行く出来なら頒布に出そうかな、くらいなので本当におかまいなく……>< Musicの星5千秋は大変でした^^; (2021年1月10日 11時) (レス) id: 313ba381d4 (このIDを非表示/違反報告)
冬枯(プロフ) - 本欲しい…でも無理そう…面目ない… 主さんツキウタ。ご存知だったんですね!まだツキアニ。2を見た程度で何も知りませんが少しずつ知る予定です。☆5千秋おめでとうございます!更新しつつはヤバいっすね…!これからも応援してます! (2021年1月9日 14時) (レス) id: ec10afebdf (このIDを非表示/違反報告)
Chris(プロフ) - 冬枯さん» いつもコメントありがとうございます!そうなんです、プロ科の1年生です。本編ではつぼみまでの成長で、開花まではしませんが、いろんなアイドルたちと関わる中で成長していく主人公を描き出せればと思います。 (2020年12月31日 17時) (レス) id: 313ba381d4 (このIDを非表示/違反報告)
冬枯(プロフ) - 続編ありがとうございます!!主人公ちゃんは正式に作られるプロ科の1年生か!!あんずちゃんなどの力を借りて成長していくんですかね…?その前に何かありそうな気もします…読めば読むほどお話に引き込まれる感じがします!これからも更新楽しみにしてます! (2020年12月31日 15時) (レス) id: ec10afebdf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Chris | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/chrisinfo/
作成日時:2020年12月17日 23時