119 ページ20
*
「痛ったあ？！ちょっと颯馬くん、新入生ちゃんの前で何てことしてくれるの？！」
颯馬と呼ばれた、濡れたように艶やかな紺色の長髪を一括りにしている青年は、ハリセンを手にしたままきっと薫を睨んだ。
「貴様がこのように
「いやいや颯馬くん、今回は完全に誤解！この子はナンパした子じゃなくて、新入生ちゃん！来年度、君の後輩になる子！」
わたわたと薫が弁明する。颯馬はそれを聞くと、少しの間思案している様子だったが、やがて構えていたハリセンをおろした。
「たしかにそれは、学院指定の鞄であるな……そういうことであれば」
「それにしても颯馬くん、珍しいね。ハリセンなんて」
薫が首を傾げた。
「あんず殿が、ちょうど近くにいた我にこれを預けていったものでな。何でも天祥院殿に呼ばれたとのことで、ハリセンを持って行くのは如何なものかということだと聞いた」
「で、刀の代わりにハリセンって訳ね」
その段になってAは初めて気づいたのだが、颯馬の腰には、刀が一振り差されていた。銃刀法違反ではなかろうか。しかし、薫も特に何も言わないところを見ると、颯馬に関しては何か特別な事情があるのかもしれない。
「新入生ちゃん、彼のことは知ってる？」
「いいえ」
「我は神崎颯馬。今年で三年生になる。りずりんの『紅月』に所属しておる」
「神崎ってことは、もしかして」
Aは、深海家からそう遠くない場所にある屋敷の名を挙げた。外様の武家だという記憶がある。
「応よ。して、貴殿は……」
「三毛縞Aです」
「三毛縞。ああ、斑殿の妹御であるか」
Aは頷いた。
「妹御と呼ばれて、怒りはせんのだな」
颯馬が目を瞬かせた。
「何故ですか？」
「うちの学校ねえ、年下の兄弟姉妹に好かれてない兄貴連中が多いんだよね。あれの弟って言われたくない、俺は俺だ、みたいな子が多くて。だから、新入生ちゃんみたいに妹と呼ばれて怒らない子はちょっと珍しく思っちゃうよね」
薫が説明してくれる。
「そうなんですか」
Aは兄に敬愛の情しかないので、妹と認識して貰えるのは嬉しいことだ。それだけ、兄の存在が多くの者に知られているということでもあるからである。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 78人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Chris(プロフ) - 冬枯さん» 元々あんスタ知ったこと自体ツキウタ。がきっかけで、あんスタ→ツキウタ。→あんスタ(今)みたいな感じなんです。製本も、とりあえず自分用に作ってみて、満足行く出来なら頒布に出そうかな、くらいなので本当におかまいなく……>< Musicの星5千秋は大変でした^^; (2021年1月10日 11時) (
レス) id: 313ba381d4 (このIDを非表示/違反報告)
冬枯(プロフ) - 本欲しい…でも無理そう…面目ない… 主さんツキウタ。ご存知だったんですね！まだツキアニ。2を見た程度で何も知りませんが少しずつ知る予定です。☆5千秋おめでとうございます！更新しつつはヤバいっすね…！これからも応援してます！ (2021年1月9日 14時) (レス) id: ec10afebdf (このIDを非表示/違反報告)
Chris(プロフ) - 冬枯さん» いつもコメントありがとうございます！そうなんです、プロ科の1年生です。本編ではつぼみまでの成長で、開花まではしませんが、いろんなアイドルたちと関わる中で成長していく主人公を描き出せればと思います。 (2020年12月31日 17時) (レス) id: 313ba381d4 (このIDを非表示/違反報告)
冬枯(プロフ) - 続編ありがとうございます！！主人公ちゃんは正式に作られるプロ科の1年生か！！あんずちゃんなどの力を借りて成長していくんですかね…？その前に何かありそうな気もします…読めば読むほどお話に引き込まれる感じがします！これからも更新楽しみにしてます！ (2020年12月31日 15時) (レス) id: ec10afebdf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Chris | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/chrisinfo/
作成日時：2020年12月17日 23時
