Case.124 ページ6
瞼の裏が明るくなった気がして、ころりと寝返りを打つ。
なんだか落ち着く香りに包まれているようで、浮上しかけた意識がゆっくりと水底へ戻り始めた。
もう少し、寝たい。
だって、なんだか身体が気だるくて、目覚めるのがちょっと億劫。
だから、もう少しだけ―――。
「―――、」
けどそれは、聞こえてきた優しい声に阻まれた。
「…A、」
頬に何かが触れて、その温かさに本能的にすり寄る。
「待て、そうじゃない。A、少しでいいから起きてくれ。…A、」
声の主が焦ったように何度も名前を呼んできた。頬に触れた温度が離れていく。それに引きずられるようにして、ゆっくりと瞼を押し上げた。
「ん…」
ぼんやりと写った視界で初めに認識したのは、明るい金髪だった。
それが朝日をほんの少し反射していて、眩しさで細めた目を擦る。
「…起きたか？」
覗き込んできた蒼い瞳と目が合って、私は返事をするように瞬いた。
ゆるりと蒼が微笑む。
「おはよう、A」
「…おはよ、零」
触れるだけのキスを交わしてから、ベッドの上で体を起こす。空気に曝された素肌を隠すように、布団を胸元へ引き上げた。
「ねむい…」
いつも睡眠欲に忠実な分、人に起こされるのは好きじゃない。
眉間にシワでも寄っていたんだろう。ふわぁっと欠伸をする隣で、零はベッドの縁に腰かけて、困ったように眉を下げた。
「無理に起こしてすまない。だけど、君が最初に目覚めた時に、そばにいられないのは嫌だったんだ」
ごめんな、と砕けた謝罪と共に頭を撫でられる。
ずるい。そんな風に謝られたら、許さないわけにもいかないじゃない。
しばらくされるがままになっていると、零がちらりと時計を見た。
「…もう出るの？」
時間はまだ6時を過ぎたばかりだけど、零は既にスーツ姿だ。家を出る直前に私を起こしに来たんだろう。
「ああ。鍵は置いておくから、君は好きなだけ居てくれて構わない。昨日は…その、少し無理をさせただろうし」
言いづらそうに濁された言葉通り、昨日はなかなかに刺激的で長い夜だった。
これでもかと慣らされた上に零がいつまでたっても元気なものだから、ぶっちゃけ何回達したか全く覚えていない。
東都水族館で大立ち回りを繰り広げて疲れてたはずなのに、よくもまぁ最後まで付き合えたものだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 784人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
胡蝶(プロフ) - 藍色さん» コメントありがとうございます！もったいないお言葉です…が、とてもとても嬉しいです！語彙力捻り出しながら書いた甲斐がありました…。書くのが遅い上に煮詰まっていて遅筆に拍車がかかっておりますが、どうかお付き合いくださいませ。 (2022年8月17日 13時) (
レス) @page14 id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
藍色(プロフ) - 作者様のキャラの感情表現、文才能力が凄すぎます…！度々一人で悶えながら読んでます！面白い作品に出会えて私は幸せです(´；ω；｀)更新楽しみに待ってます！ (2022年8月16日 3時) (レス) id: 82bbddf0f3 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - ねるさん» コメントありがとうございます！一気読み嬉しいです！書くのが遅くてお待たせしておりますが、頑張って更新いたします…！ (2022年8月9日 15時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ねる - 一気読みしてしまいました！続き待ってます！更新頑張ってください(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎) (2022年8月8日 9時) (レス) @page27 id: a5b6221b88 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます！楽しんで頂けて嬉しいです！特に二幕はデレ期のつもりなので…距離感を詰めていく様子にお付き合い下さいませ！ (2022年7月14日 20時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：胡蝶 | 作成日時：2022年6月25日 12時
