Case.156 ページ49
そう勧められて注文したのは、王道のミートソース。降谷さんはカルボナーラだった。
「…風見、勧めておいてなんだが、食べる時は気をつけろよ。君はこのあと本庁だろう」
「え?…あ」
ソースを飛ばすなということだろう。今は背広を脱いで白シャツにネクタイだけだから、ソースが飛んだらすぐ分かる。
ミートソースのシミをつけたシャツでの登庁は、あまりにも格好がつかない。
「紙エプロンでも頼むか?」
「…いえ、大丈夫です」
あれは見た目が少し恥ずかしい。ソースがはねないように気をつければいい話だ。何も子供じゃないのだから、それくらいできる。
はず。
「そういえば降谷さん、珍しく服を買いに行かれたんですね」
「ああ、これか」
今日の降谷さんは私服だが、着ている服に見覚えがない。
「必要なら言ってくだされば…。昨日は定時上がりでしたし、買いに行くくらいできましたよ」
降谷さんの服は、実は僕が買っている。地味でいいからと言われているが、数回着たあとは僕に下げ渡してくれるので、こっそり僕自身が気になる服も混ぜていることは秘密だ。
「いや、これは」
すると、降谷さんは少し言いづらそうに視線を外して。
「…Aに」
…なるほど。
まさか九条捜査官からのプレゼントだったとは。それなら何故今日のような日に着ているのか。ラフな服装ではあるが、彼女と居るときに着ればいいものを。
なんて、口にはしないが。
馬に蹴られたくはないし、命は惜しい。
「よくお似合いです」
「…ありがとう」
そこで話は打ち切られた。
妙な沈黙が流れてしまい、なんだか居心地が悪い。
「…自分、少々お手洗いに」
「ああ、行ってこい」
そそくさと席を立ち、足早にその場を離れる。
「…センスが無い、と大量に買い与えられたとは…言わないでおいてやるか」
降谷さんの呟きが耳に届くことはなかった。
なお、ミートソースははねずに食べ終えることに成功した。
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胡蝶(プロフ) - 藍色さん» コメントありがとうございます!もったいないお言葉です…が、とてもとても嬉しいです!語彙力捻り出しながら書いた甲斐がありました…。書くのが遅い上に煮詰まっていて遅筆に拍車がかかっておりますが、どうかお付き合いくださいませ。 (2022年8月17日 13時) (レス) @page14 id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
藍色(プロフ) - 作者様のキャラの感情表現、文才能力が凄すぎます…!度々一人で悶えながら読んでます!面白い作品に出会えて私は幸せです(´;ω;`)更新楽しみに待ってます! (2022年8月16日 3時) (レス) id: 82bbddf0f3 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - ねるさん» コメントありがとうございます!一気読み嬉しいです!書くのが遅くてお待たせしておりますが、頑張って更新いたします…! (2022年8月9日 15時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ねる - 一気読みしてしまいました!続き待ってます!更新頑張ってください(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎) (2022年8月8日 9時) (レス) @page27 id: a5b6221b88 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます!楽しんで頂けて嬉しいです!特に二幕はデレ期のつもりなので…距離感を詰めていく様子にお付き合い下さいませ! (2022年7月14日 20時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年6月25日 12時