Case.143 ページ30
「安室さんのギター、超上手かったし!JK+イケメンバンドもありなんじゃない?」
「それはちょっと…目立つのはあまり…」
零がやんわりと断りにかかる。
まぁ、当たり前よね。
潜入捜査官が積極的に顔を晒してどうするんだって話だし、それに。
「私からもお願いしておくわ。彼のファンが増える機会は、できれば減らしておきたいもの」
零が“そういう”対象として騒がれてるのは、見ていて気分のいいものじゃないからね。
すると、いつの間にかカウンターから出てきた零が、私の前にコーヒーを置いた。
「…今の、妬いてるように聞こえたけど」
「何よ、これでも人並みに妬くのよ?」
気にしてないとでも思ってたのか。彼氏がこんなに騒がれて、スルーできるほど経験値もないのに。
そう意味を込めて見やれば、零ははたと瞬き、次いで目元を優しく緩ませた。
「…妬くのは僕だけだと思ってたけど…そうか」
伸びてきた指がさらりと髪を梳いて、流れるように私の手首を掬い取る。
その自然な動きにぽかんとしている間に、零は私の手のひらに唇を寄せ、軽いリップ音を鳴らした。
女子高生達が沸く。
「――…妬いてくれるのは嬉しいけれど…僕は君しか目に入っていないから、安心してほしいな」
そう言って、蒼い瞳で私を見つめながら、手のひらに頬を擦り寄せてくる。
「…、う…」
じわりと顔に熱が昇った。
なんでここで気障を出してくるの…!
対応できなくて初心な反応しかできない。零も分かっててやってるから質が悪い。
押し黙っていると、園子ちゃんが深くため息を吐いた。
「相変わらず見せつけてくれるわー…」
不本意。
零を睨んだら肩をすくめて受け流された。この野郎。
「さて、話を戻しますが…バンドには入れません。ですが、練習なら見てあげられますよ。これから貸しスタジオに行って、少しやってみます?」
零の提案に、園子ちゃんと蘭ちゃんが乗り気になる。
つまり、零のギターが聞けるってこと…?
それならついていく価値はあるかな。
「…なぁ、アンタ」
ぽつりと、真純ちゃんが呼びかけた。
その鋭い目を向けた相手は、―――零。
「ボクとどこかで…会ったことないか?」
ほんの一瞬、空気がピンと張る。
「…いえ。今日が初めてだと思いますけど?」
その空気をものともせずに、零は穏やかに躱して見せた。
私はこっそりと口の端を持ち上げる。
やっぱり、真純ちゃんは諜報には向かないらしい。
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胡蝶(プロフ) - 藍色さん» コメントありがとうございます!もったいないお言葉です…が、とてもとても嬉しいです!語彙力捻り出しながら書いた甲斐がありました…。書くのが遅い上に煮詰まっていて遅筆に拍車がかかっておりますが、どうかお付き合いくださいませ。 (2022年8月17日 13時) (レス) @page14 id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
藍色(プロフ) - 作者様のキャラの感情表現、文才能力が凄すぎます…!度々一人で悶えながら読んでます!面白い作品に出会えて私は幸せです(´;ω;`)更新楽しみに待ってます! (2022年8月16日 3時) (レス) id: 82bbddf0f3 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - ねるさん» コメントありがとうございます!一気読み嬉しいです!書くのが遅くてお待たせしておりますが、頑張って更新いたします…! (2022年8月9日 15時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ねる - 一気読みしてしまいました!続き待ってます!更新頑張ってください(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎) (2022年8月8日 9時) (レス) @page27 id: a5b6221b88 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます!楽しんで頂けて嬉しいです!特に二幕はデレ期のつもりなので…距離感を詰めていく様子にお付き合い下さいませ! (2022年7月14日 20時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年6月25日 12時