Case.129 ページ11
「そんなに大したことしてないんだけど…」
初めてポアロに来た時にされたキスの方が、よっぽど大人向けだった。
ちらり目の前のボウヤに視線を向けると、少し恥ずかしそうにオレンジジュースをすすっている。
「さすがのボウヤでも、キスシーンはまだ早かったみたいね?」
「…ソンナコトナイデス…」
「声ちっさ」
大人びてはいるけど、こういうところはまだお子様か。
「それにしても、意外とくっつくまでに時間かかりましたよね」
「ですよね。私てっきり、再会した日にそのままお付き合いされるんだと思ってました」
「そうよねぇ、まさかこんなにも安室さんの片想いを応援することになるとは思わなかったわ」
女性陣が好き勝手言ってくれる。確かに、ポアロではそれなりに初な反応してたから、そう思われても仕方ないけど。
「色々あるのよ、大人にはね」
意地とか。
あと自覚してなかったのもあるけど。
「でも、ある意味良かったんじゃないですか?長引いたおかげで、安室さんのファンがこぞって応援に回ってたし」
「確かに…。いきなり“恋人ができました”だと、反感買って炎上必至だもんね…それはそれで分かり合えるけど…」
「どういう意味なの梓さん…」
嫌よそんなの。分かり合いたくない。
「分かんないわよ梓さん。Aさんの容姿なら、そこらの女なんて見ただけで負けを認めるわ」
「SNSも、一時期Aさんの話で持ちきりでしたし…」
「えっ、そうなの?」
ボウヤが驚いた声を上げた。それに、何故か園子ちゃんが自慢気に語る。
「そうよぉ、クラスの女子の間じゃ《ポアロのイケメン店員安室さんが想いを寄せてる謎の美女Aさん》って、そりゃあもう話題だったんだから!」
「へぇ…」
ボウヤの視線が大丈夫なのかと訴えてくる。
SNSについては問題ない。なんなら火消しは自分でやったし、それくらいの情報操作なんて片手間で終わった。
が。
「それ本当に勘弁してくれない…?」
人の口に戸は立てられない。
ポアロへ来た女子高生達に、「あれが噂の“謎の美女”」なんてひそひそ囁かれる身にもなってもらいたい。
そりゃ意地も張りたくなるってもんでしょ。
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胡蝶(プロフ) - 藍色さん» コメントありがとうございます!もったいないお言葉です…が、とてもとても嬉しいです!語彙力捻り出しながら書いた甲斐がありました…。書くのが遅い上に煮詰まっていて遅筆に拍車がかかっておりますが、どうかお付き合いくださいませ。 (2022年8月17日 13時) (レス) @page14 id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
藍色(プロフ) - 作者様のキャラの感情表現、文才能力が凄すぎます…!度々一人で悶えながら読んでます!面白い作品に出会えて私は幸せです(´;ω;`)更新楽しみに待ってます! (2022年8月16日 3時) (レス) id: 82bbddf0f3 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - ねるさん» コメントありがとうございます!一気読み嬉しいです!書くのが遅くてお待たせしておりますが、頑張って更新いたします…! (2022年8月9日 15時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ねる - 一気読みしてしまいました!続き待ってます!更新頑張ってください(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎) (2022年8月8日 9時) (レス) @page27 id: a5b6221b88 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます!楽しんで頂けて嬉しいです!特に二幕はデレ期のつもりなので…距離感を詰めていく様子にお付き合い下さいませ! (2022年7月14日 20時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年6月25日 12時