Case.78 ページ44
「A!」
零が必死に名前を呼ぶ声を軽くいなして、ポアロを後にする。
せっかく零が作ったケーキ、もうちょっとゆっくり食べればよかったかな。
でも、考えてみてほしい。あんなに大注目浴びてたら、ゆっくりケーキなんて食べていられない。あれは外堀から埋めようとした零が悪い。私悪くない。
うんうんと1人で頷いていると、私の後を追いかけるようにドアベルが鳴った。
「待ってくださいA!」
「…ちょっと、バイト中に客の後追いかけてくるのはどうかと思うわよ」
「残念ですが、梓さんに追いかけろと言われまして」
それもどうかと思うけど。
…まぁいいや。
「それで?店の外まで追いかけてきてどうしようっての?」
まさか無理やり理由を聞き出すなんて強引な真似はしないでしょ。
しかも、ここはまだポアロの店内から丸見えの位置。勢いに任せた行動は“安室透”としての沽券にかかわる。
さてどう来るか。
「あー…その、」
「何?」
「…どうというわけでも、ないんですが」
困ったように視線をうろつかせて、頭の後ろをかりかりと掻いている。心なしか若干顔が赤い気もするし、これはどう考えても。
「…無策で突っ込んできたのね」
「うっ…」
その通りですと言わんばかりに表情が引き攣った。普段のトリプルフェイスからは想像もつかないようなボロの出し方だ。
「そうまでして理由が知りたいの?別にいいじゃない。アンタにとっては得でしかないんだし」
私なりに、ほんの少し歩み寄ってみただけだ。零としては衝撃的だったのかもしれないけど、個人的にはちょこっと意識を変えてみただけで、できればそっとしといてほしい。
これでも少し緊張したんだから。
「…確かに、貴方が向き合ってくれたことは嬉しいです。でも、理由も分からないまま享受したくはありません」
「難儀な性格ね」
「気になったことは、とことん追及する性分なもので」
皮肉を返したら、零は肩をすくめてにこりと笑う。なんだ、調子戻って来たな。
まったく。
「それは、探偵としての性分?それとも…“安室透”だから?」
「いいえ。“僕”だから、ですよ」
ふと、目元の雰囲気が変わる。
なるほどね。“降谷零”としての性分…か。
相変わらず器用なことをしてくれる。この分じゃ、どうやら逃がしてはくれないらしい。
…仕方ない、少しだけ話しておくか。
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胡蝶(プロフ) - 明里香さん» ご報告ありがとうございます。修正いたしました! (2022年8月2日 2時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 82話、名前変換出来ていない箇所があります。 (2022年8月1日 7時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - 明里香さん» ご報告ありがとうございます!修正いたしました。ご不便をおかけいたしました…! (2022年7月31日 17時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 66話、名前変換出来ていない箇所があります。 (2022年7月31日 11時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - cherry*さん» こちらこそです!更新本当に遅いのですが、どうか最後までお付き合いください! (2022年5月27日 12時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年5月19日 5時