3.毒リンゴと王子様と【出水公平】

夢の中で涙を流して ページ34

.







出水、と呼べば
彼は振り返ってくれた






公平、と呼べば
彼は微笑み返してくれた








「……………ごめ、ごめん、こうへ……」








だから、名前を呼んだ



謝罪と、感謝の気持ちを込めて




なのになんで君は









「そんな、顔しないで…………こぅ、へ…」






どこで間違えてしまったのだろう


何を間違えてしまったのだろう






なんで君を、泣かせてしまっているのだろう









「もう、喋んじゃねぇよ………ｯ」






なんで?

私は公平の声が聞いていたいよ






そういえばあたりが騒がしいな、と見渡す






そこは





昔私が訪れた、近界で

そうだ、遠征に来てたんだ



何してるの公平

そんなとこで座ってないで

船に戻らなきゃ




皆が待ってるよ







「お前置いて行けるかよ!!!」







そういった公平の顔は涙こそ出てないけれど悔しそうで、悲しそうで



私のせいだ、と思うと同時に、


私にこんな表情までしてくれるんだ、ってどこか浮かれた






「もう、私無理だよ………死んじゃうよ




自分が長くないこと、私が一番、わかっ、て…………」






「いいから!!!
ぜってぇ助けるから!!だから……ｯ、頼むから…………！」









あたりが真っ暗になっていく






それとほぼ同時に一筋の光が差し、それは広がっていく









「…………きろ……おい……A……





起きろ!!!」






肩を強く揺さぶられ、目が覚める


目の前には心配そうに覗き込む太刀川さんがいた






「たち、かわさ………」






頬に伝う涙を、私は拭う







酷い夢を見た









「はぁぁあ…………すっげえ唸されてっから何事かと思った……」




「す、すみませ…………」




「どうした?また怖い夢でも見たか」




「………私が、遠征先で、死んじゃう夢で…

ど、どうしよう、太刀川さん
私、私本当に………」




「安心しろ
お前は、俺や出水、風間さんが死んでも護る」





頭に置かれた手は過去の父を思い出させるような温かさで







「………っ、たち、かわさ……」




「…………大丈夫、大丈夫だ」




「………ぅ、ぁ………」





流れる涙は止まることを知らず、シーツをぬらしていた




.




もしも主人公ちゃんが遠征先で死んでしまったら


という非常に暗いお話となってしまいました

苦手な方がいたら本当に申し訳ないです…

次回作を書くか迷いながらも頑張ってきたいと思います！

答案用紙→←荒船さんと誕生日

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す