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98口目 ページ1

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本部のひと気の少ない端の方で、私たちは向かいあう






「…私の記憶、ある程度戻ってきてるの


でも、あなたと過ごした記憶は戻らない。だから、私はあなたの好きな赤城Aじゃないの




私は、あなたの彼女じゃない」





一言一言、言葉を発する度に苦しくなる


喉がきゅう、と締め付けられているようで
言葉が上手く出てこない







「………なぁ、一つ、聞いてもいいか?」







何、と私は無表情のまま彼を見つめる




彼は変わらず私を見ない
床の、どこか一角をぼーっと見つめているようだった





「お前さ、俺の事避けてたじゃん。



あれ、何で?」





「ああ、彼女に無視されてるみたいで嫌だった?
ごめんね、でも仕方ないの。
理由は言いたくないけど、納得して。


仕方ない、っていう理由で」





私がどれだけ傷ついてるのか、きっとあなたは知らない



戻したくても戻らない記憶にどれだけ苦しめられているのかも、

伝えられない想いを抱え続けなきゃいけない私の悲しみも、


全部、全部






「あなたは、何も知らなくていいの」







この言葉がきっかけになったのか


彼は私の手を掴んだ






「なんで、そんなこと言うんだよ…」




「…だって、そうでしょ。
あなたは知らなくていいの。私の記憶が戻るのを、待っていればいい。


だって、あなたに私の記憶をどうこうできるわけじゃないんだから」






冷たく言い放つ言葉は、彼の中に届いているのだろうか





「そんなのわかんねぇだろ!!!

それに俺は今のお前のことだって好きなんだよ!!

記憶があるかないかなんて…
そんなの関係なく、お前が好きなんだ!!!」





私は、下を向いた





「………そんな、



………簡単に、言わないでよ………」






零れる涙に彼は驚き、私の頬に触れようと手を伸ばす





その手を私は掴んだ









.









「………好き




本当は……あなたのこと………




好きだった」





なんでだろう




彼に伝えたかったはずなのに


伝えたくてずっと苦しかったのに






伝えた後も、変わらない






溢れる涙は喜びを表してなんかいなかった






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99口目→



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おむ(プロフ) - 二宮さん» 読んでくださりありがとうございます^_^ そう言っていただけてとても嬉しいです!書いてよかったなあと、心から思います!本当にありがとうございました! (2019年12月25日 23時) (レス) id: 40b62768f7 (このIDを非表示/違反報告)
二宮 - 完結お疲れ様です!ゆっくり見ました。とても面白かったです! とてもいい作品でした! (2019年11月25日 20時) (レス) id: 5c8a1b7b56 (このIDを非表示/違反報告)
藤見日和(プロフ) - 良すぎて爆死 (2016年7月17日 14時) (レス) id: 3600278a3d (このIDを非表示/違反報告)
- とても良い作品に巡り会えて、感動しているのと、出水がイケメンの二つです☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆ (2016年2月5日 5時) (レス) id: 98181381be (このIDを非表示/違反報告)
- ヒャァァ/// (2016年2月3日 20時) (レス) id: 98181381be (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おむらーす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=mucho  
作成日時:2015年11月27日 19時

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