検索窓
今日:8 hit、昨日:16 hit、合計:177,645 hit

99口目 ページ2

.





「なら…!」





好きなら、何で



彼はそう口にする





「駄目なの、私があなたを好きになっちゃ、駄目だったの………」






意味がわからない、と彼は私を見つめる





ああ、やっと目が合った







「気づいてない?




あなたね、私と話すとき目を合わせなかったの


多分それは、記憶のあったころの私を探してるから」




「!」




心の中で、彼もそれには気づいてたんじゃないかと私は目を伏せ、また開く





「私はあなたのことが好き。
だけど、あなたが本当に好きなのは誰?




同じ私でも、中身が違うでしょう?

私と、記憶のある私は確実に違うところがあるの



それは何かわかる?」





「…………いや、」



彼は首を横に振る

それもそうだ。
きっと、この違いに私だけが敏感なだけなのかもしれない。けれど、それでも大切なことだった




「それはね、





あなたと過ごしてきた時間」






彼は目を見開いた







「ほら、私たちには全然足りてない。


あなたは今の記憶のない私を知らないし、私もあなたを知らない





そんな私たちに、好きだなんて感情、本当にあると思う?」






「……それは……」






「ほら、




だから、簡単に好きだなんて言わないで



その言葉で、傷つく人もいるの。
…………私みたいに」





「…っ」





好きな人の好きな人

それは、私であって私じゃない





「だから、今からすることを許して欲しい



これは私を傷つけたあなたへの罰

せめてもの罪滅ぼしとでも思って?」






触れるだけ



私は、彼の唇に私のそれを重ねた







「………………記憶が戻ったら



私に優しくしてあげてね」







‘‘ごめんなさい”

そんな言葉は絶対に言わない


だって


伝えたいことは謝罪なんかじゃないから






.









.









「ありがとう、出水」








.






.







.








私は最後に、彼に毒を塗りつけた





それはきっと一生消えない毒





忘れられない毒






白雪姫というものがたりで毒を盛られたのはお姫様だったけれど、


本当に毒の効果を受けたのお姫様じゃない





それはきっと王子様だ



王子様は、お姫様という薬のない恋の毒に




心を奪われてしまったのだから









end.

あとがき.→←98口目



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (246 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
398人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

おむ(プロフ) - 二宮さん» 読んでくださりありがとうございます^_^ そう言っていただけてとても嬉しいです!書いてよかったなあと、心から思います!本当にありがとうございました! (2019年12月25日 23時) (レス) id: 40b62768f7 (このIDを非表示/違反報告)
二宮 - 完結お疲れ様です!ゆっくり見ました。とても面白かったです! とてもいい作品でした! (2019年11月25日 20時) (レス) id: 5c8a1b7b56 (このIDを非表示/違反報告)
藤見日和(プロフ) - 良すぎて爆死 (2016年7月17日 14時) (レス) id: 3600278a3d (このIDを非表示/違反報告)
- とても良い作品に巡り会えて、感動しているのと、出水がイケメンの二つです☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆ (2016年2月5日 5時) (レス) id: 98181381be (このIDを非表示/違反報告)
- ヒャァァ/// (2016年2月3日 20時) (レス) id: 98181381be (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:おむらーす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=mucho  
作成日時:2015年11月27日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。