毒リンゴと王子様と【出水公平】

32口目 ページ33

目の前に近界民がいたにも関わらず



私は母に近づいた。







嫌だ嫌だとないていると、私にもその近界民は攻撃をしかけてくる。






「もう、嫌ぁ…」






死ぬんだ、と
そう、覚悟した時



目の前には黒いコートを羽織った兄がいた。




兄はその近界民を倒すと、私を担いで走り出した






「嫌‼お母さんが‼お母さんがいるの…ッ‼」




「母さんは死んだだろ‼
見ただろ⁉しん、だんだよ…」








涙は見えなかったけど、
それでも悲しんでいるのはわかった。







「…ひっ、



私の、せいなの…
もっと、しっかりしてたら…っ」







泣くのは後にしろ、と兄は私の背中を叩く




いつの間にか、周りは近界民に囲まれていた







「……クソッ………




せめて、お前だけでも…守れたら…」







私を降ろし、抱きしめながら、
兄はトリガーを強く握った。





「トリガー…
そうだ、これがある」







兄は私の肩を掴み、



「お前に渡すトリガーは時間を止めることができる‼

ほんの少しの時間だけど、それでも…


その隙に、お前なら逃げれるハズだ





俺とはもう会えなくなるけどよ、
悲しむなよ?ちゃんと、生きるんだ。





生きて、このおかしな世界を救ってくれ…」








何が起きたかわからなかった。


気づいたら兄は灰となっていて
私の手にはトリガーが握られていた。





「にい、さ……




何で…?何で?」






わけがわからなかったけど、
いろんな方向から敵が来ていて、狙われているのがわかった。



だから、昔見た兄のようにトリガーを持ち


「トリガー 起動」と


精一杯、勇気を振り絞った。

33口目→←31口目

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す