76話 存在意義 ページ28
『…ごめん。ベラベラ聞く事になって。でもどうしても聞きたくて、』
「何が分かるんだよ」
低く発せられた声。普段の彼からは想像もできない。
鳥肌が立つが、色々言われる覚悟だ。体を彼の方に向け、少し近づく。が、雪宮くんは頭を下げて目元を隠したままで気持ちを抑えるかのように歯を鳴らした。
「ていうか聞いてどうすんの？治せんのかよ。
資格も持ってない、マネージャー止まりみたいなお前が俺の何を___！」
その瞬間ハッとした様子で、自身で口を塞ぐ雪宮くん。
そして怯えた様子でこちらをゆっくりと見た。
「……ごめ…今、俺…」
『…大丈夫、何も言ってないよ』
顔を手で隠した彼の背中に手を置く。
『…雪宮くん。確かに私は君の言う通り治せないし、残念だけど身代わりにもなれない。だけど今見て見ぬふりをしたら後で「ああしとけば良かった」ってなるのが嫌なんです』
私は誰かに好かれるためにこの仕事をやってる訳じゃない。自分の事よりも絶対に選手が優先。
私が今彼に目の事を聞いたのは、さっきも言った通りもしものことが起きたら対処できない可能性があるかも知れないからだ。
その場で狼狽えて何も出来ない自分になるのは嫌だ。これはまさに私のエゴ。
『(その結果、彼を傷つける事に繋がってしまったけど…)』
『…本当、身勝手でごめんね。こんなタイミングで言う私が最低って分かってるから、幾らでも恨んでいいから。…ごめんね』
「…そう」
雪宮くんがふらりと静かに立ち上がる。
その瞬間、彼の両手が勢いよく壁につかれた。その腕の間にいる私は驚いて固まってしまった。
俗にいう壁ドン。漫画やドラマであるようなときめくなんてもんじゃない。向けられているのは好意ではなく、抑えきれない程の怒り。
「じゃあ一生恨んでやる。それに俺はAに心配される程自分のことを分かってない訳じゃない」
「俺は、俺の
怒りとは裏腹に真っ直ぐな目。私はゆっくりと手を伸ばし、彼の目の下を親指でなぞった。
『…うん、それでいいよ。私は雪宮くんに感謝してるから』
私は再び『ごめんね、』と呟き、彼を抱きしめた。
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苺子(プロフ) - kaedeさん» コメントありがとうございます！隙あらば夢主ちゃんに構ってアピールする士道くんです（） (2023年1月20日 19時) (
レス) id: b537714951 (このIDを非表示/違反報告)
kaede(プロフ) - あは。もうありがとうございます。士道くん最高すぎて逝きそう (2023年1月19日 21時) (レス) @page42 id: 426304659c (このIDを非表示/違反報告)
苺子(プロフ) - 猫さん» コメントありがとうございます！面白いと言ってもらえて嬉しいです…！更新頑張ります (2023年1月19日 21時) (レス) id: b537714951 (このIDを非表示/違反報告)
苺子(プロフ) - 朝花さん» ご心配ありがとうございます。これからもこの小説を読んでくださると嬉しいです。よろしくお願いします (2023年1月19日 21時) (レス) id: b537714951 (このIDを非表示/違反報告)
奥山乃愛(プロフ) - 朝花さん» 分かりました！なんかすみません🙇 (2023年1月19日 6時) (レス) id: fdc1778b4b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：苺子 | 作成日時：2022年12月25日 20時
