26話 貪欲 ページ27
『(スポドリもう一回取りに行かなきゃダメかな…)』
両手に抱えたスポドリの数を数える。帝襟さんに頼んで酸素スプレーと湿布の追加を…
『うわっ!』
目線を下げていたせいか、角から出てきた人物とぶつかってしまった。その拍子で持っていたスポドリが床に落ち、大きな音が廊下に響いた。
『(やば、)す、すみません。お怪我は…?』
「…」
ぶつかった人物の顔を見る。黒髪に下まつ毛が特徴的でクールな印象。
彼はその表情を対して変えず、落ちたスポドリを見つめていた。ただ終始無言なのが怖い、心無しかイラついてない…?
『……あの、私が片付けるのでお気になさらず…ぶつかってすみませんでした…』
徐々に小さくなる声。その空気が気まずくて、しゃがみ込んでスポドリを拾う。凹んだり中身が出たりしてなかったし良かった、早く片付けて離れよう…
「…はぁ、」
重たいため息が頭上で一つ。そのまま歩いて行ってしまうかと思ったら、彼もしゃがんでスポドリを拾ってくれた。…あれ、手伝ってくれてる…?
「鈍臭いな」
『す、すみません…』
そんな事を言いながらも手伝ってくれる彼と目が一瞬だけ合う。…うわ、イケメン。まつ毛長い、しかもこの時間トレーニング中なのにあんまり疲れてないっぽい。
じぃっと見つめていると不快そうに彼の眉間に皺が寄った。
「あ?」
『あ、ご、ごめんなさい…』
「一々謝んな、うぜぇ」
最後の一つのスポドリをカゴに入れると彼は早々に立ち去って行った。
私はその後ろ姿を見ながら、彼の顔を思い出していた。真っ直ぐな瞳というには少々表現が綺麗な気がする。どちらかというと貪欲な感じ。
あとクールな雰囲気かと思ったら、喋ったら意外と尊大な感じだったな…「うぜぇ」って言われたし、何なら最後小さく舌打ちされたし、口悪かったし。
『(……ていうかそれよりも、)』
『イケメンだったなぁ…』
今思えば私、この日で三徹目だった。
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苺子(プロフ) - ぺんぺんさん» コメントありがとうございます!読んで頂き嬉しい限りです(*´꒳`*)これからもよろしくお願いします! (2023年3月18日 23時) (レス) id: b537714951 (このIDを非表示/違反報告)
ぺんぺん(プロフ) - 最初からとっても面白いので、ついつい熱中して呼んでしまっています・・・。これからも頑張ってください!! (2023年3月17日 20時) (レス) @page28 id: 0923c869aa (このIDを非表示/違反報告)
苺子(プロフ) - ユイさん» コメントありがとうございます!今あなた様に出会えたことに感謝です((更新頑張ります!(*'▽'*) (2023年3月15日 22時) (レス) id: b537714951 (このIDを非表示/違反報告)
ユイ - 初コメ失礼します!もっと早く見つければ良かったです。好きです!応援してます (2023年3月14日 13時) (レス) id: 0e75ff5f17 (このIDを非表示/違反報告)
苺子(プロフ) - アレンさん» コメントありがとうございます!雪宮くんに振り回される夢主です((これからもよろしくお願いします…! (2023年2月4日 11時) (レス) id: b537714951 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:苺子 | 作成日時:2022年11月29日 16時