▼幼き日に ページ1
．
薄暗い大きな屋敷の中。
ウォールライトは淡い光を放ち、そしてぱっと弾けるように消えるを繰り返す。窓から隙間風がヒュッ吹き込み、私の髪を揺らす。
大きなアンティーク調の思いドアを両手で押して開くと、その先には寂れた書庫。
寂れた中でも本棚の中の本は鮮やかで美しい色彩を放つ。
窓からは木漏れ日が差し込んでいた。
「ここは、変わらないなぁ。」
寂しい目をしてぽつりと呟く彼女は、そっとテーブルの上の本の表紙の金色の文字を指でなぞった。
椅子に被った埃を払い、そっと座る。
手に持った本を机に置いて、深呼吸。
「これからも、ずっと、」
そっと表紙を開く。
「何も、」
タイトルの文字を心の中で読み上げる。
「変わらずに、或るように。」
本の中には、無邪気に笑う幼い私の写真。
泣いている私の写真、苦しんでいる私の写真。
どれもこれも私の写真だ。そこに映っている私以外の人物は黒いインクのようなもので塗りつぶされていて見えない。
あの顔も、あの顔も、どれもこれも、どの
もう満足、お腹一杯だ。
丁寧な手つきでパタンと本を閉じる。
閉じた本の表紙を見てタイトルをぽつりと小さな声で呟く。
本のタイトルは“Ruikou's Memories”
私は、立ち上がり、踵を返して書庫を後にした。
決して振り返らないように。
．
続く
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