【本編小説】この夏は君と。 (ページ36)

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ホテルにチェックインした後、特になにもなく次の日を迎えた。7月1日だ。午前10時前にはチェックアウトしなければいけないが、それ以前に集合時間が10時までなので、それより前に起きなければならない。普段は呼ばれないかぎり起きないおれは、何年かぶりにセットしたアラームで目覚め、朝を迎えた。まだ8時になっていないのを見て「まだ寝れるじゃん」と思い瞼を閉じたが慌てて起き上がった。コンビニで買ってきたおにぎりを朝食にして、食事を済ます。
　服を着替え、忘れ物がないか確認をして部屋を出るとロビーへ向かった。

　そしてチェックアウトして外に出ると町はいよいよ夏、といった感じに変わっていっていた。まだ少し時期が早いのに、どこからか蝉の鳴く音が聞こえてくる。まだ朝だから過ごしやすいが、これからだんだんと暑くなるだろう。空調がきいている電車に早く乗り込もう、と思ったおれは足早にホテルを去った。

　電車に乗り込むと、涼しい風に包まれる。否、涼しいを通り越して寒い。
　とりあえず座ろうと思い、歩き出したと同時に後ろのドアが閉まって電車が出発するアナウンスが流れた。

　座った直後にガタン、と大きく揺れて電車は進み出す。生憎、乗り過ごしを恐れたために一睡もできなかったが、代わりに移り変わる景色を窓から眺めることができた。降りる駅が近づくと、澄んだ青い海が見えた。照った太陽が海のハイライトを強調させ、きらきらと光った宝石のように見えて思わず魅入ってしまう。
　しかし、降りる駅にまもなく到着するというアナウンスが聞こえてはっと我に返る。立ち上がって入り口付近まで寄ると、ドアが開くのを待った。

　電車から降りると、まず磯の香りが鼻についた。電車の中で見たあの海が集合場所だろう。姉さんから教えてもらった道を歩いて、集合場所である浜辺に向かうことにした。
　しばらくすると、コンクリートではない白い砂が視界に飛び込んできた。顔を上げると先程見た海が目の前に広がっていた。広い海にぽつんと船がある。あそこに行けばいいんだろうか。

　坂になっている芝生を降り、船がある方に向かっていると人影が見えた。目を凝らしてよく見てみると5人以上はいる。船の近くにいるということは行き先は同じだと思うのだが、声はかけたくない。面倒事になる気がした。
　客観的に見て盛り上がっている雰囲気なので、すぐにこちらに気づくということはないだろう。事なきを得ようと端に寄り、彼らから距離を取った。