【本編小説】この夏は君と。 (ページ28)

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◆向日葵のような［冬涙雪］ページ28

。

「ねぇねぇ、君も島に行くの？」

向日葵のような明るい黄色の髪をした少女が、人懐っこい笑みを浮かべながら、振り向いた私の顔を覗き込む。

好奇心と探究心からなのか、こちらを見つめる髪と同じ黄色い瞳は、とてもきらきらと輝いている。

私は、バシャバシャと軽く波を蹴っていた足を止めた。

「…あ…えっと……、」

焦りを表情に露わにする雪に、黄色い瞳の少女はにこにことしながら、疑問符を浮かべたような顔をする。

あれ、こういうときってなんて言うんだっけ…？こんにちは？よろしく？それとも自己紹介？

ぐるぐるぐるぐると、頭の中で何を言えばいいかを必死に考えた。初対面の人と突然、しかも1人だけで話すことなんて久しぶりで、緊張と不安はピークだった。

口を開きかけたが、緊張して声が出なかった。喉が乾いたように張り付いていて、上手く声を出せない。言葉を紡げない。

声を出そうとして、口をぱくぱくと動かす私を見て、その少女は驚いたような顔を一瞬浮かべたが、そのまま私の返事を待たずに続けた。

きっと彼女は、言葉が出てこなかった私に気を使ってくれた。

「こんにちは！私は朝黄沙耶香！貴方は？」

「…あっ、えっと、と、冬涙雪、です…！そ、その…よろしくお願いしますっ…！」

あわあわと慌てている私に対して、黄色髪の少女、朝黄さんはニコニコとしている。

とても可愛らしい子だなぁ。
私とは違って、話すのが上手で羨ましい…。

綺麗な色の瞳…！と、言いながらぐいぐいと近づいてくる朝黄さん。

フレンドリーでいい人なのは凄くわかるけど、少し距離が近すぎて怖いなぁ…。

でも、仲良くなりたいな。

「雪ちゃん？可愛い名前！雪……じゃあ、ユッキーって呼んでもいい？」

「あっ、はい！あっ、あの、朝黄さんも、もしかして招待状を貰っているんですか…？」

朝黄さんの手に握られた、私の貰った封筒と同じ封筒が目に入った。だから、ここに居るのか。

「うん！そうなの！あっ、沙耶香でいーよ！そんなに固くならないで。ユッキーが良かったら集合場所まで一緒に行こ！」

「あっ、えっ…！ちょ、ちょっと待って…！」

私の返事を聞かずに、私の手を引き、駆け出す沙耶香さん。
天真爛漫、好奇心旺盛。そんな言葉が似合いそうだ。

急いでサンダルを履き直して、上着を羽織る。

風でふわっと髪がなびいた。爽やかな風に包まれながら、砂浜に踏み込む。

暖かい手の感覚は、なんだか、久しぶりだった。