2014年組 ページ3
takuya side.
少しだけざわついてる控室の中、鏡の前でアイロン片手に立つ俺はさっきからずっとデカい声を出してる。
さっきから向こうで斗亜とふざけている女の子に向かって。
「Aー!髪の毛やったるからはよこっち来てー!」
温めていたアイロンの温度を示す画面の点滅が終わって、準備が完了したことを俺に知らせる。
アイロンはあっため終わったから、あとは本人がここに座ってくれたら始められるんやけどなぁ。
「Aってば!!!!はよして!!!」
後詰まってんねんから!と付け足したとき、Aのためにと用意していた椅子にドカリと誰かが座って、
俺の視界に広がるキラキラと光る金色の髪の毛。
「拓哉、俺の髪先やって」
「びっ、くりしたぁ。風雅か」
「はよ」
「えぇけど…」
眠そうな顔の風雅と鏡越しに目が合った。
よろしく、って一言付け足して、俺から目線を外した風雅の金色の髪の毛に触れる。
傷んでんなぁ。ブリーチしすぎや。
「はい、風雅終わったよ」
「ん、ありがと」
『拓哉ごめんお待たせー…ってあれ、風雅先やったん?』
「お前がいつまでも斗亜と遊んでるからやろ」
『やって、斗亜がさぁ』
「うっさい言い訳すんな」
ぱちん、とAのおでこを指で弾きながらAに向かってべぇっと舌を出す風雅。
そのままスタスタ歩いて楽屋から出て行った。
あー、これ完全に風雅嫉妬してんやん。
『なんなん、なんか風雅機嫌悪ない?』
「…さぁなぁ」
『拓哉、風雅と喧嘩した?』
「してへんわ、俺のせいにすんな」
風雅が機嫌悪いのなんか完全にお前のせいやろ、なんて教えてあげへんけど。
『もう。風雅が機嫌悪くなったら面倒くさいなぁ』
「そう思うなら機嫌取ってきてくださーい」
『えー!なんで私が!?』
「なんでも。ほらちゃんと可愛くしたるから、可愛くご機嫌取りしてきい」
ぶつぶつ文句言ってるAを無理やり座らせて髪の毛に指を通した。
さらさらの茶髪にアイロンの熱を通して、まるで魔法をかけるように髪の毛を巻いていく。
ふわふわに仕上がった髪の毛を揺らしながら俺の方を振り向いて「ありがと」って笑うAはやっぱり可愛くて、愛おしくて。
出会った頃からずっとAはいつだって俺たちLilの、
俺と風雅の、お姫様やった。
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作者名:しゃけ | 作成日時:2024年1月9日 23時