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教室に入り浮所くんと分かれて着席した。

私の後ろの席には那須くんが座っている。


いつもみたいに「おはよう」が言えない。
回ってくるプリントを回すのも全然楽しくない。
那須くんの顔が、見られない。


シャーペンを手にしたままノートをぼーっと見つめていると、ノートにぽつりと水滴が落ちた。
やがてシミが3個、5個と増えていき、窓の外がザーザーと鳴り出したのを聞いて、雨が入ってきたのだとわかった。

私は先生の目を盗んで窓を閉める。


「雨やばいね」


「.....うん」


話しかけてきたのは那須くんだった。

私は机の横にかかっている鞄を取る。
折り畳み傘は入っていない。

どうやらドラマのような失恋シチュエーションが準備されているようだ。



授業終わり、席を立つと那須くんに呼び止められた。

はい、と言われて出された紺色の折り畳み傘。


「傘持ってないでしょ」


「.........え、?」


「俺もう1本あるし」


「.....大丈夫だから」


そう言って去ろうとすると
那須くんは私の手を取ってその上にポンと折り畳み傘を置いた。


「この前貸してくれたから、お礼」


「.......ありがとう」


私は下を向いたまま言った。




息が、詰まって、


苦しいよ。

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作者名:ちょこころね | 作成日時:2018年12月23日 8時

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