夜空。 ページ17
「……」
綺麗な夜空を見ると、厳しすぎた訓練から逃げようとした日々が想起される。
他の人から見れば俺は幸せなんだろうけど、俺からしたらとんでもないくらい不幸な人生だった。
物心ついた時にはもう俺は孤児だったし、じいちゃんに引き取られるまでは愛なんて何も知らなかったし。
あの時は、俺の髪もまだこんなに奇抜な色じゃなかったよな。真っ暗で、宛ら俺自身みたいだった。いや俺自身だけどさ。雷に打たれて髪の色が変わるなんてふざけてるとしか思えないけれど、まあ残念ながら事実だ。
鬼殺隊に入ってから桜餅を食べすぎて髪の毛が桃色になった人を見て、少しだけ普通なのかなって思った。……ほんとに少しだけな?そんなこと気にしてるよりも自分の命が惜しかったから、もう全力で逃げ回ったけどさ。
だから、女の人には目を向けることはすれど、いちばん初めみたいに求婚することは、無くなった気がする。気がするってか、そうしたんだけどな。
でもそういうのも終わって。もう何にもやることがなくなって、柱に至ってはお館様直々に頭を下げられたらしいではないか。俺たちは好きでやっていたんだから、寧ろ全ての何やら面倒なことをやってくれていたそちら側に、どちらかと言えば感謝しているのだが。
でもこんなことが言えるようになった時点で、以前よりは多分成長してると思うんだよな。わかんないけど。
結果から言えば、俺と伊之助は、炭治郎に引き取られた……のかな。どちらかというと同居な気がするけど、住居を提供してくれてるのはこいつだから、引き取られたってのが正しいと思う。片付けやらはしっかりしていたけれど、所々彼らの普通が見えて、なんだか眉を下げてしまった。
最後まで戦い切ったのはいいけれど、結局俺は炭治郎や伊之助みたいに鬼に因縁があるわけでは、少なくとも隊に入るまではなかった。ただ拾ってくれたひとが育手だっただけの話で、ここまで来てしまったのだ。ほんとうに、どうしようもない。
「……どうした善逸?眠れないのか?」
襖が開く。縁側に出てきた彼を振り返り、眠れない、と甘えた声を出した。ただもう、甘えたくて。こういうときには彼に抱きつき、泣きつくまでしてしまった方がいっそ気分が良くなるのだ。
「仕方ないやつだな……。布団、来るか?」
「……いく……」
一緒に入った布団は暖かくて、全く眠れなかったはずなのに、いきなり眠くなって。お前が居ないなんて考えられないわ、なんて笑いながら、目を閉じた。
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作者名:朝焼。 | 作成日時:2020年1月26日 2時