chocolateのゆくえ《ars》 (ページ8)

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糖分を摂取するのにうってつけなチョコを黙々とつまんでるっていうのに思考はうまくまとまってくれない。

どうやって翔ちゃんに謝ろう。

「おい、それ全部食うのかよ、太るぞ」

「っ！？」

あまりにも突然降ってきた言葉に生チョコをちゃんと噛まずに飲み込んでしまった。

ごほごほむせ返っていたら呆れたように「なにやってんだよ」なんて声がして背中を大きな手が撫でる。

「しょ、翔ちゃん、なんでここに…」

「なんでもなにも、ここにこないと夕飯食えないし」

今日雅紀のやつ用事があって付き合えねぇっていうから、と小さな声でぼやく翔ちゃんは私のほうを大きな目で見つめる。

「それに、智くんに負けたままバレンタインが終わるのは癪だしな」

ずいっと一歩翔ちゃんが踏み込んでくる。

座る私をのぞき込んで、綺麗な指で私が半分くらい食い散らかしたチョコを指さした。

「それ俺のだろ、ちょーだい」

「だ、ダメだよ、私のだもん」

生チョコをほとんど噛まずに飲み込んじゃったからしゃべると喉が痛い。

ごくり、つばを飲み込んでみる。

翔ちゃんを前にして緊張してるのか全然つばはのどを潤す量にはならなかった。

「やっぱバレンタイン邪魔したの怒ってんのか」

「そんなわけないでしょ」

私が智くんのこと好きじゃないってわかっててそんなこと言うんだから、翔ちゃんは意地悪だ。

その証拠にその顔は笑っている。

全部わかっているくせに、翔ちゃんは見逃してくれない。

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