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私はイチゴの加工食品があんまり好きじゃない。
だけど翔ちゃんが前にほかの女の子を見ながら「イチゴ牛乳のパックを持ってる女の子は可愛い」って相葉くんと話してたから意地でもこれしか飲まないことに決めている。
女の子は別にみんながピンクやイチゴが好きなわけじゃない。
翔ちゃんは知らないかもしれないけど。
それでもそれをかわいいと思う誰かのためにみんな自分を偽って見せる。
少しでも好きな人の好きなものになりたくて。
「そんで、結局何の話なわけ。飲み終わったし帰りてぇんだけど」
「つまりね智くん、この余ってる生チョコ全部もらってくれない？」
「やだよ」
「ひどい！」
「そんな甘ったるい幼馴染の痴話喧嘩が詰まったチョコなんて食えるか」
「そこをなんとか」
ずいっとラッピングした箱を押し出すと強い力で押し戻された。
「だいたい喧嘩してんなら作んなきゃいーだけだろ」
「だって癖で作っちゃったんだもん」
「癖で作るかよ」
「作るの」
翔ちゃんに八つ当たりして怒りと自己嫌悪でグダグダになりながらそれでも家に帰りついた私の手にはチョコの材料とラッピング用の空箱やリボンがあったし。
今年は作ってやるもんかとそれを放り投げたけど結局気が付けばしっかり作り上げたチョコレートがバットに並んでいて。
しかも味を調節するためにそういえばいくつか味見もして。
ああホント私ってバカみたい。
作っちゃったしもったいないからって気合い入れてラッピングしてピンクのリボンで何度か失敗しながら綺麗なリボン飾りにして。
「つか俺もうもらったじゃん。義理感満載の青いやつ」
「うん、義理ね。翔ちゃん以外はみんなそれ」
「何なら今目の前で食ってんだろ。なのに本命のそのピンクのやつをなんで俺が持って帰んなきゃいけねぇんだよ」
「だって智くんのお姉さんチョコ好きでしょ？」
「そこかあ……」
ぱくり。
ココアパウダーで綺麗な指先を汚しながら智くんが義理チョコを一粒口に放り込む。
数口で飲み込むと続けてじゅーとコーヒー牛乳を吸い上げる。
そしたら空気が空回る音がした。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年2月14日 18時
