今宵逢ふ人:3 ページ3
《……わざわざ来てくれてありがとうございます》
セントレア空港の出発ロビーで、彼は深々とわたしに頭を下げた。
「そんな、気にしないでください。……それより、見送りってわたし一人だったんですね？」
《あー…はい。僕、地元こっちじゃないんで。そんな見送ってくれる友達なんていないんすよ》
普段のスーツ姿ではなく、カジュアルな服装に身を包み、いたずらっぽく言う彼を見て、そういう事ならやっぱり来れて良かったなとホッとした。
「……1年でしたっけ。行ってる期間は」
《はい一旦は。ビザの都合で。そのあと延長できるかは全部自分次第です》
「そうですか。壮大な挑戦ですね」
《…まあでもこの身がとりあえずあれば、それで》
なんとかしますと微笑む彼は、いつも以上に精悍で、スッキリして見えた。
《……佐々木さん、今日どうやってここまで来たんですか？車すか？》
「………っあー…。うん、車……です」
わたしを空港まで乗せてきたてっちゃんは、今は少し離れた場所からわたしたちを見守っている(見張っている)。
予想通りセントレアまでついてきた訳だ。
学生旅行のシーズンのようで若いグループの往来が目立つ。バレてなきゃいいのだけど。
帽子も被らず家を出ようとしたから慌ててニット帽を渡しておいた。
――○○航空より出発のご案内を申し上げます
機械的なアナウンスと共に彼が搭乗する予定の便名がロビーに響く。
彼が手元のチケットをちらりと見遣った。
「いよいよですね」
《……ええ》
足元に下ろしていた機内持ち込みの荷物を肩に掛け、彼は改めて私を見つめてきた。
「大変なこともいっぱいあると思いますけど、負けないで頑張ってくださいね。体調管理は忘れずに。無理はしないで。ちゃんと薬とか持ってます？あとは……」
《……ははっ、佐々木さん、母ちゃんみたいな事言っとりますよ》
心配してるんです！と言うと、さっきまでの優しい顔からふっと笑顔が消えた。
《……ねぇ、佐々木さん》
「え？」
「俺ね、絶対夢叶えます。だから、もし俺が佐々木さんの彼氏より良い男になって帰ってきたら、俺と付き合って下さい」
「……ええ？！」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 21人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Hina(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» Mrs.ぱんぷきんさま コメントありがとうございます！キュンキュンして頂いてありがとうございます！また読みに来てくださると嬉しいです。 (2020年7月4日 22時) (
レス) id: 4d7f12fd70 (このIDを非表示/違反報告)
Mrs.ぱんぷきん(プロフ) - 朝からキュンキュンしちゃいました照 (2020年7月1日 5時) (レス) id: 534e341e06 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Hina | 作成日時：2020年6月30日 22時
