今宵逢ふ人:2 ページ2
『まぁ、告白されたってのは一旦スルーするとして』
「はい…」
『断ってんでしょ、それは』
「はい、さっき言った通りです」
『なんでそんな敬語なん、おもろ。……で、その見送りだけど』
「はい」
『……行きたいの？Aは』
ヘーゼルの瞳がわたしを見据える。
不機嫌な感じもなく、ただ淡々と聞いてくる。
「うーん……うん。そう……ね」
行けるなら、行きたいかな
と呟いてみる。
ちらりと彼を見遣る。
てっちゃんはフォークを咥えたまま、じっとわたしを見つめている。
『……何でその人、アメリカに行くん？』
「あっ、そうそう。なんかね、映像系の仕事に就きたいんだって」
てっちゃんの瞳が丸くなる。
そう、私が彼の頼みを断れなかった理由。
それは彼がてっちゃんと同じような世界に身を投じようとしていると知ってしまったからだった。
「学生時代から趣味で動画編集とか、映像製作とかやってたんだって。でも、やっぱそれで食べていくのはって諦めて普通に仕事してたけど、年齢重ねてきて後悔したくないって考えになったみたいで。色々考えたけど、身軽な内に本場のアメリカで揉まれたいって思ったんだって」
急に告げられた壮大な夢に面喰らったのが正直なところではあるけど、今までの仕事に対する姿勢を見ている分には誠実で真っ直ぐな人である事は知ってる。意外に負けん気が強いところも。
だから、なんとなく、頑張れちゃうんじゃないかなって応援したくなってしまったのだ。
「……結構長いことお店担当してくれてたし、悪い人じゃないのは分かってるから…。最後くらい見送りしてあげたいなって思ったの。……あっ、でも！でもね、てっちゃんが行くなっていうなら行かないよ、やめとく」
てっちゃんの反応を見るのが怖くて堪えきれず席を立つ。
まだ中身の入っているマグカップと一緒にキッチンへ逃げ込んだ。
コーヒーメーカーからカップにひたひたになるくらいコーヒーを注ぐ。
背後にてっちゃんの視線を感じるが何も言ってこない。
やがて観念したような溜息が聴こえてきた。
『……いいよ、行ってやりん』
「え？……ほ、ほんと？いいの？」
「……まぁ、渋々だけど。でも、お世話になった人なんでしょ」
仕方ないやん、とそっぽを向いてしまったが口調はいつものてっちゃんだった。
わたしは嬉しくて思わずてっちゃんに抱きついた。
てっちゃんも優しく抱きしめ返してくれた。
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Hina(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» Mrs.ぱんぷきんさま コメントありがとうございます！キュンキュンして頂いてありがとうございます！また読みに来てくださると嬉しいです。 (2020年7月4日 22時) (
レス) id: 4d7f12fd70 (このIDを非表示/違反報告)
Mrs.ぱんぷきん(プロフ) - 朝からキュンキュンしちゃいました照 (2020年7月1日 5時) (レス) id: 534e341e06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Hina | 作成日時：2020年6月30日 22時
